前回、全数調査は理屈の上では完璧、という話をしました。今回は、その「現実」を見ていきます。
象徴的な例が、2020年(令和2年)に実施された国勢調査です。
この年は、新型コロナウイルスの感染拡大のさなかでした。
在宅ワークが増え、外出も控えられていた時期で、家にいる時間はとても長かったはずです。
「これなら回収率は高くなるはず」と予想されていました。ところが、結果は違いました。
国勢調査は法律で回答が義務とされています。それでも、調査票の回収率は約8割にとどまりました。
最終的な回収率は、約83.7%でした。
つまり、全国民が対象の全数調査ですら、約2割の世帯から回答が得られなかったのです。
「全数調査」と名乗っていても、実際には完全な「全数」に届かないのが現実なのです。
過去の国勢調査の未回収率(聞き取りで補完した世帯の割合)を見てみましょう。
2000年は1.7%でしたが、2020年には16.3%まで、年々上昇し続けています。
20年で未回収率は約10倍に増えたことになります。
オートロックマンションの増加や、不審な訪問への警戒など、現代社会の事情が背景にあります。
「全員を調べる」ことは、技術的にも社会的にも、どんどん難しくなっているのです。
さえ国勢調査ですら8割そこそこ。「全数調査」って名前ほど簡単じゃないんだね…。
全員を調べるのが難しいなら、現実的な選択肢は「標本調査」です。
標本調査とは、母集団から一部を取り出して調べ、その結果から全体を推測する方法です。
世論調査、視聴率調査、市場調査、選挙速報。私たちが目にする調査のほとんどが標本調査です。
世論調査は、日本国民全員ではなく、約2,000人に電話で聞いて全体の傾向を推測します。
視聴率調査も同じです。全視聴者ではなく、サンプル世帯の視聴データから推定しています。
選挙の「当選確実」も、投票締切直後の出口調査という標本調査の結果に基づいています。
工場の製品検査も、1日10万個作るなら全数検査は無理なので、一部を抜き取って検査します。
さえ私たちが普段目にする調査は、ほぼ全部が標本調査。「一部から全体を知る」がスタンダードなんだよ。
標本調査は、コストが低く、実施頻度も高く、データ取得も速いという強みがあります。
ただし誤差は避けられません。標本の選び方を間違えると、全体像を誤解してしまいます。
標本調査の難しさは、「標本が母集団を正しく代表しているか」、つまり選び方にあります。
さえ選び方さえ間違えなければ、標本調査はすごく便利な方法。次はいよいよ「誤差」の中身に踏み込むよ!
次回は、標本調査につきものの「誤差」と「バイアス」を詳しく見ていきます。
