正規分布には、覚えておくと役立つ大事な経験則があります。
「68-95-99.7ルール」と呼ばれる、正規分布でもっとも有名な性質です。
μ±σの範囲に、データの約68%が入ります。
μ±2σの範囲に、データの約95%が入ります。
μ±3σの範囲に、データの約99.7%が入ります。
標準正規分布で言えば、Zが−1〜1の範囲に約68%、−2〜2の範囲に約95%収まります。
身長で実感してみましょう。日本人男性の身長をN(170, 36)、平均170cm・標準偏差6cmとします。
μ±σ=164〜176cmの範囲に約68%、μ±2σ=158〜182cmに約95%が入ります。
μ±3σ=152〜188cmには約99.7%。190cm近い人はかなり珍しいことになります。
さえ68-95-99.7ルールは、知っているかどうかで実務の判断が変わるくらい強力な道具だよ!
実務での使い方も見てみましょう。イベントで会員1,000人にTシャツを配るとします。
身長はN(170, 36)、Sサイズは164cm未満、Mサイズは164〜176cm、Lサイズは176cm以上とします。
μ±σ=164〜176cmはちょうどMサイズの範囲。ここに約68%の人が入ります。
残りの32%は左右対称なので半分ずつ。164cm未満と176cm以上に約16%ずつ分かれます。
Mサイズ680枚、Sサイズ160枚、Lサイズ160枚。この比率で発注すればロスを最小化できます。
さて、ここからは二項分布と正規分布の関係、本シリーズのハイライトです。
二項分布B(n, p)で、nが十分大きいとき、その分布の形は正規分布に近づきます。
具体的には、正規分布N(np, np(1-p))で近似できます。
前回見たB(10, 0.5)の棒グラフを思い出してください。左右対称な山型で、すでに正規分布に似ていましたね。
nを大きくするほど、ますます正規分布の形に近づいていきます。
二項分布の確率を直接計算するのは大変です。コインを100回投げて55回以上出る確率などは膨大な計算が必要です。
でも正規分布で近似できれば、標準正規分布表を使って簡単に計算できます。
さえ二項分布と正規分布の橋渡し。これが統計学の美しさのひとつだよ!次回、実際に確率を計算していこうね。
第7章3回目、ポイントを整理しましょう。
二項分布B(n, p)は、E(X)=np、V(X)=np(1−p)。正規分布N(μ, σ²)は身長など幅広い場面に現れる分布でした。
標準正規分布N(0, 1)はμ=0、σ²=1の基準となる分布。Z=(X−μ)/σで標準化できます。
68-95-99.7ルールはμ±σ・μ±2σ・μ±3σでそれぞれ約68%・95%・99.7%。正規近似はN(np, np(1-p))でした。
二項分布と正規分布、形も性質も違うけれど、nが大きくなると美しくつながっている。それが本章のハイライトでした。
次は『正規分布の確率計算』を学びます。標準正規分布表の使い方、二項分布の正規近似による確率計算を扱います。
