今回は少し趣を変えて、「回帰」という言葉が生まれた歴史をたどります。
主役は19世紀イギリスの研究者、フランシス・ゴルトン。進化論のダーウィンのいとこです。
ゴルトンは「親の特徴はどれくらい子に受け継がれるか」という遺伝の研究に関心を持っていました。
1880年代、彼はおよそ200組以上の親子の身長を測定し、データにまとめます。
予想はシンプル。「背の高い親からは背の高い子が生まれるはず」。でも結果は違いました。
散布図にしてみると、ある不思議な現象が見えてきたのです。
非常に背の高い親(例:190cm)の子は、平均すると183cmほど。親より少し低めでした。
非常に背の低い親(例:155cm)の子は、平均すると163cmほど。親より少し高めでした。
つまり子の身長は、親より「全体の平均」に近づく方向に動いていたのです。
ゴルトンはこの現象を英語で「regression」と名づけました。日本語では「回帰」です。
regressとはラテン語由来で「戻る・帰る」という意味。平均に帰ってくる様子から命名されました。
面白いのは、その後「回帰」という言葉が「直線をあてはめる方法そのもの」を指すようになったことです。
さえ「回帰」って漢字ちょっとカタイけど、元は「平均に戻る」って意味だったんだね!
ここからは、平均への回帰が起きる身近な例を見てみましょう。
第1回のテストで満点を取った生徒が、第2回も満点を取れる確率は意外と低いものです。
多くの場合、第2回は少し下がった点数になります。極端な高得点には運の要素も含まれるからです。
逆に第1回で最下位だった生徒も、第2回は少し平均に近づく形で点数が上がることが多いです。
極端な結果には「その時の運」が含まれていて、次はその偶然が薄まりやすいのです。
ある年に大ブレークした新人選手が、翌年成績を落とす「2年目のジンクス」も同じ理由です。
能力が落ちたのではなく、初年度の「運が良かった部分」が翌年平準化されるだけ、というケースが多いのです。
「叱った生徒は伸び、褒めた生徒は下がる」という話も、実は平均への回帰にすぎません。
教師の介入があってもなくても、極端な点数の次は平均に近づく、という同じ傾向が起きるのです。
さえ「叱ったから伸びた!」と思いがちだけど、実は平均への回帰かもしれないんだよ!
平均への回帰を知らないと、因果関係を読み違えてしまうことがあります。
次は、ゴルトンの発見を数学で整理した人物、ピアソンの登場です。
