対数の基本がわかったところで本題です。時系列データに対数変換を施すと、どんなメリットがあるのでしょうか。
大きく分けて3つの効用があります。順番に見ていきましょう。
効用1は「桁の違うデータを同じグラフで比較できる」ことです。
会社Aは1万円→2万円→4万円→8万円、会社Bは100億円→200億円→400億円→800億円、どちらも毎期2倍とします。
通常の折れ線グラフでは、会社Bの線の中で会社Aは横軸に張りついた一本線になり、比較できません。
ここで対数変換の出番です。対数で見ると、両社の売上はどちらも等間隔の階段状になります。
「成長率の比較」がフェアにできるようになるのです。絶対額が大きく違う指標を比べたいときに便利です。
対数目盛りにした上のグラフの通り、両社の伸びを同じ傾きで比較できます。
効用2は「指数関数的な成長が直線に見える」ことです。
指数関数的な成長とは「毎期一定の割合で増える」現象のこと。毎年5%伸びる売上などが当てはまります。
これを通常のグラフで長期間描くと、上のように初期はほぼ平ら、後半に急激にカーブが立ち上がる形になります。
ところが縦軸を対数にすると、この同じデータがきれいな直線になります。
「毎期一定の割合で増えている」ことが、傾きの一定さで一目でわかるようになるのです。
長期の株価チャートやGDPの推移を対数で描くと、成長率が変わった節目も読み取れます。
効用3は「変化の質」が読みやすくなることです。
通常の折れ線グラフは、値が大きくなるほど同じ%の変動でも振れ幅が大きく見えてしまいます。
株価が100円→110円になるのも、10,000円→11,000円になるのも、どちらも「10%の上昇」です。
でも通常のグラフでは後者のほうが大きな出来事に見えます。対数グラフでは同じ高さの上昇として表現されます。
対数変換は「絶対値の比較」から「変化率(割合)の比較」へ視点を切り替えてくれるのです。
さえ株価の長期チャートとか、ニュースで「対数目盛で見ると...」って表現を見かけたら、これのことだよ!「割合で比較したい」ときに使う、ってだけ覚えておけばOK。
ただし対数変換は万能ではありません。使うべき場面と使わないほうがよい場面があります。
桁が大きく異なるデータの比較や、長期の指数関数的成長を見るときには適しています。
一方、絶対値の差そのものを見せたい場合や、0や負の値を含むデータには適しません。対数が定義できないのです。
一般読者に直感的に伝えたい場合も、慎重に。対数グラフは知らない人には誤読されやすい表現方法です。
プレゼンや報告書で使うときは「これは対数目盛です」とひとこと添える配慮も大切です。
さえ対数グラフって便利だけど、知らない人には「なんで右肩下がりに見えるのに増えてるの?」って混乱されちゃう。誰に見せるかで、使い分けるのが大人のグラフ術です。
では、今回のポイントを整理しましょう。
時間軸は等間隔が大原則。欠損があっても時間そのものは飛ばしません。
対数は「掛け算を足し算に変える道具」。10倍が「+1」、100倍が「+2」でしたね。
対数変換のメリットは3つ。桁の違う比較、指数関数的成長の直線化、変化率の比較の公平化です。
対数は万能ではなく、0や負の値には使えず、読み手によっては誤解を生むこともあります。
対数の概念は最初は誰でも戸惑いますが、腑に落ちると「対数目盛」という表現がすっと読めるようになります。
これで第1章はおしまいです。本編の「第1章の確認問題」にも挑戦してみてください。
