2026年6月9日、Anthropic は新世代モデル Fable 5 と公式プロンプトガイドを公開しました。本章はその公式ガイドの要点を翻訳・再構成し、X で話題のテクニックを一次情報と照合して整理します。
Claude Fable 5 は、Claude 5 ファミリー最初のモデルであり、Opus の上位に位置する「Mythos クラス」初の一般提供版です。位置づけは明確で、数時間〜数日かかるエンドツーエンドの仕事を任せるためのモデル。公式ガイドも「簡単なタスクだけで試すと実力を過小評価する。一番難しい未解決問題にぶつけたチームが最良の成果を得ている」と述べています。
長時間のゴール指向タスクで指示を保持し続け、数日規模の自律実行を完走。
仕様が明確な複雑システムを、従来は数日の試行錯誤を要したものでも単一パスで実装。
密度の高いチャート・スクリーンショット・Webアプリ画面の読解精度が大幅向上。
多数のサブエージェントを派遣・維持する信頼性が大きく向上。監督役に最適。
バグ検出の再現率が Opus 4.8 比で明確に向上。リポジトリ履歴の横断調査も得意。
複数の論点が絡む依頼から、次に何をすべきかを自分で判断できる。
# Fable 5 でセッションを開始 claude --model claude-fable-5 # セッション中の切替・推論の深さ調整 /model /effort
effort(推論の深さ)が、賢さ・速度・コストのバランスを決める主ダイヤルです。公式の推奨は次の通り。
| effort | 位置づけ | 使いどころ |
|---|---|---|
| low / medium | 軽量・高速 | 定型作業・簡単な書き換え。それでも旧モデルの xhigh を上回ることがある |
| high | 既定。ほとんどのタスクはこれ | 日常の開発タスク全般 |
| xhigh | 最高精度 | 品質が絶対条件の複雑ビルド・多段分析。検証行動が最も厳密になる反面、時間とトークンを使う |
公式ガイドの通奏低音は意外にも削除です。旧モデル向けに丁寧に書き込んだ指示・スキル・ガードレールは、Fable 5 では「指示しすぎ」となり品質を下げ得る、と明言されています。手順を逐一指定する代わりに、ゴール・理由・境界線・検証方法の4点を渡すスタイルへ。
Fable 5 は依頼の意図を理解すると、タスクを関連情報に自分で結びつけられます。公式が推奨する型を日本語化すると:
私は[より大きなタスク]に取り組んでいます。対象は[誰のため]。 その人たちに必要なのは[成果物が可能にすること]です。 それを踏まえて:[実際の依頼]
長時間ワークフローで「どこで止まって確認すべきか」を場合分けで列挙する必要はありません。原則を1つ渡せば足ります:
私の確認が本当に必要な場面でだけ停止してください。 具体的には:破壊的・不可逆な操作、本質的なスコープ変更、 私にしか提供できない入力が要るとき。 それ以外は作業を続け、終わったら報告してください。
Fable 5 は過去の実行から学んだ教訓を記録・参照できると性能が伸びると公式が明記しています。Markdown ファイル置き場を渡すだけで構いません:
教訓は1ファイル1件で保存し、冒頭に1行サマリーを置いてください。 修正された間違いも、確認できた有効なアプローチも、 「なぜ重要だったか」と併せて記録すること。 リポジトリやチャット履歴に既にある情報は保存しない。 重複を作らず既存ノートを更新し、誤りと判明したノートは削除してください。
過去セッションの蓄積から立ち上げるには、「これまでのセッションを振り返り、サブエージェントで主要テーマと教訓を抽出して保存して」と一度依頼すれば、以後の土台になります。
長い自律実行では、進捗の「言いっぱなし」を防ぐ一文が効きます。Anthropic の社内テストでは、これで虚偽の進捗報告がほぼ消えたと報告されています:
進捗を報告する前に、各主張をこのセッションのツール実行結果と照合してください。 証拠を指し示せる作業だけを報告し、未検証のものはそう明言すること。 テストが失敗したら出力と共にそう言い、スキップした工程はスキップしたと言い、 完了・検証済みのものは断定的に述べてください。
Fable 5 は積極性ゆえに、頼んでいないメール下書きや予防的な git ブランチ作成など未依頼の行動を取ることがあります。やってよいこと・いけないことを明示しましょう:
私が問題の説明・質問・思考の整理をしているときは、 成果物はあなたの「見立て」です。所見を報告して止まり、 修正は依頼されてから行ってください。 システム状態を変えるコマンド(再起動・削除・設定変更)の前には、 証拠がその操作を本当に裏付けているか確認すること。
X で広まった「Fable をオーケストレーターにして、作業を Opus や Sonnet に振らせる」運用は、公式ガイドの並列サブエージェントの推奨と合致する、理にかなった構成です。Fable 5 はサブエージェントの派遣・維持・通信管理が旧モデルより格段に安定しており、公式も「サブエージェントを頻繁に使い、ブロッキングせず非同期で進めよ」と推奨しています。
Claude Code では、サブエージェント定義(.claude/agents/)の model: フィールドで部下ごとのモデルを指定できます。コスト構造上も合理的です──Fable 5 は約 $10/$50(入力/出力・100万トークンあたり)と高価なので、監督の思考にだけ Fable を使い、物量仕事は安価なモデルに流すのが定石になります。
独立して進められるサブタスクはサブエージェントに委譲し、 彼らが走っている間もあなたは作業を続けてください。 サブエージェントが脱線したり、必要な文脈を欠いているときは介入すること。
公式ガイドで特に重要な推奨がこれです。自己批判より、まっさらなコンテキストの検証用サブエージェントの方が成績が良い。長時間タスクでは「一定間隔ごとに、サブエージェントを使って仕様との適合を検証せよ」という自己検証の仕組みをプロンプトに組み込みましょう。
X の図解にあった /loop は実在します。ただし Fable 固有のプロンプト技法ではなく、Claude Code のスケジュール実行機能です。プロンプトを一定間隔で繰り返し実行させ、状態をポーリングできます。
# 15分ごとにビルド状態を確認し、失敗したら通知 /loop 15m ビルドが通っているか確認して、失敗していたら知らせて # ループの停止 /loop stop
| 注意点 | 内容と対処 |
|---|---|
| 1ターンが長い | 高 effort では1リクエストが数分、 自律実行は数時間に及ぶことも。タイムアウト設定と「待ち方」(非同期チェック)を見直す |
| 頼んでいない事をする | 積極性の裏返し。境界線テンプレ(上記⑤)とチェックポイント運用で制御 |
| 旧プロンプトが害になる | Opus 4.8 以前向けの細かいスキル・指示は品質を下げ得る。一度デフォルトで走らせ、必要な指示だけ戻す |
| 一部リクエストを拒否 | 攻撃的サイバーセキュリティと生命科学領域は安全分類器が作動し、善意の作業でも誤検知あり。API では Opus 4.8 への自動フォールバック構成を推奨 |
| 推論の書き出し指示はNG | 「思考過程をそのまま出力して」系の指示は reasoning_extraction の拒否を誘発。旧スキルに残っていないか監査を |
| まれに早期停止 | 長セッション終盤、「ではXを実行します」と言って止まることがある。「最後までやり切って」の一言で再開 |
| トークンは高価 | $10/$50 per 1M tokens。effort調整・サブエージェントへの委譲・キャッシュ活用でコスト設計を |
SNS で流通している Fable 5 情報を、公式ドキュメント(2026年6月9日版)と照合しました。教材として使う際の信頼度の目安にしてください。
| X で見かける情報 | 判定 | 根拠 |
|---|---|---|
| effort を上げると賢くなる | 公式確認 | effort が知能・速度・コストの主ダイヤル。既定は high、最高は xhigh |
| 「Ultracode」という最上位モード | 記載なし | 公式の effort は low/medium/high/xhigh の4段階。俗称と思われる |
| /loop で自律監視させる | 実在 | Claude Code のスケジュール実行機能。Fable 固有ではない |
| 「ダイナミックワークフロー」機能 | 名称は記載なし | 公式にこの名称の機能はないが、実態(並列サブエージェントへの動的委譲)は公式推奨パターンと一致 |
| 50以上のサブエージェントを並列起動 | 数値は記載なし | 並列サブエージェントの信頼性向上は公式確認。具体的な数の上限・実績は公式記載なし |
| メモリ指示で性能向上 | 公式確認 | 教訓のファイル記録で性能が伸びると明記。運用ルールの推奨文まで提供されている |
| 古いプロンプトは害になる | 公式確認 | 旧モデル向けスキルは「指示しすぎ」で品質低下の恐れ、と明言 |
| 「6月22日まで」等の期限情報 | 未確認 | 公式ドキュメントに該当記載を確認できず。提供条件は公式発表で都度確認を |