賃金と物価の関係

Wages and Prices

物価と賃金は追いかけっこ

賃金と物価は、互いに影響を及ぼし合いながら動いています。関係を一言で表すと、「追いかけっこ」です。

まず、賃金が上がる側から見てみましょう。企業が従業員の給料を上げると、企業にとっての人件費という費用が増えます。増えた費用の一部は、商品やサービスの値段に上乗せされることがあります。なぜ物価は上がるのかで見た「作る費用が増えると値段が上がる」という経路の、人件費バージョンです。

逆に、物価が上がる側から始まることもあります。物価が上がると、同じ給料で買える物やサービスの量が減り、生活費の負担が増します。すると、働く人や労働組合から「賃金を上げてほしい」という要求が強まります。

つまり、「賃金の上昇→物価の上昇→さらなる賃金要求」という具合に、賃金と物価はお互いを追いかけ合う関係にあります。

「良い循環」と「悪い循環」

この追いかけっこには、望ましい形と、望ましくない形があります。

賃金の伸びと物価の伸びがそろって上がっていく状態は、好循環と呼ばれます。賃金が上がった分、物価が上がっても生活の実感としては大きく損をせず、企業も売上の増加を賃金に還元できる、という回り方です。

一方、物価だけが先に上がり、賃金の伸びがそれに追いつかない状態が続くと、実質賃金賃金と実質賃金で見た、物価の変動を差し引いた賃金の実質的な価値)が目減りし続けます。給料の金額は増えているのに、買える量は減っていく。これが悪い循環です。

いまの日本はどこにいるか

では、いまの日本はどちらの循環に近いのでしょうか。2つの数字を並べてみます。

2026年の春闘における賃上げ率は5.26%でした(連合・第1回回答集計)。5%を超える賃上げは3年連続で、数字だけを見れば、賃金は着実に上がっているように見えます。

ところが、2025年の実質賃金は前年比マイナス1.3%でした(厚生労働省「毎月勤労統計調査」速報値)。名目の賃金は上がっているのに、物価上昇を差し引いた実質では、むしろ目減りしているという結果です。

項目
2026年 春闘賃上げ率5.26%(5%超は3年連続)
2025年 実質賃金(前年比)マイナス1.3%(速報値)

出典: 連合/労働政策研究・研修機構、厚生労働省「毎月勤労統計調査」

円安と物価で見たように、輸入コストの上昇が物価を押し上げる場面が続くと、賃上げのペースがそれに追いつくかどうかが焦点になります。5.26%という賃上げ率と、マイナス1.3%という実質賃金。このふたつの数字をどう読むかは、みなさん自身が判断する材料として、ここに並べておきます。

もっと深く ― 賃金が上がりにくかった時代DEEP DIVE

ここからは、基礎の一歩先の話です。読み飛ばしても本筋は追えます。

「値上げできない・賃上げできない」空気

いま賃上げのニュースが目立つのは、逆に言えば、長いあいだ賃金が上がりにくい時代が続いていたことの裏返しでもあります。物価が上がらない時代には、企業の側にも「値上げをすれば客が離れる」という空気があり、値上げをためらう分、賃上げの原資も生まれにくいという状態が続いていました。

この空気がどのように染みつき、企業と雇用のあり方にどう影響してきたのかは、別の章であらためて取り上げる予定です。ここでは、いまの賃上げの動きが、長い停滞のあとに出てきた変化だということだけ、押さえておいてください。

考えてみるTHINK
Q1

賃上げの原資は、どこから来るのでしょうか?

ヒント: 企業の売上や、値上げによる価格転嫁とのつながりで考えてみましょう。

Q2

「値上げするな」という空気は、結局誰の首を絞めることになるでしょうか?

ヒント: 値上げをためらった企業が、何を後回しにするかを考えてみましょう。

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