円安と物価
Weak Yen and Prices円安とは
経済のニュースで「円安」「円高」という言葉を聞いたことがあると思います。まず、この言葉の意味を丁寧に確認しておきましょう。
例えば、1ドルの商品を買うのに100円が必要な状態から、150円が必要な状態に変わったとします。同じ1ドルを手に入れるのに、以前より多くの円を払わなければならなくなりました。これは、円の「力」が弱くなった、つまり円安(えんやす。円の価値が外国のお金に対して下がること)と呼ばれる動きです。反対に、1ドルを買うのに100円で足りていたのが90円で済むようになれば、円高です。
数字だけを見ると紛らわしく感じますが、「1ドルを買うのに必要な円が増える=円安」「減る=円高」と覚えると迷いません。円安が進むと、海外から見た日本の物やサービスは安く見える一方、日本から見た海外の物やサービスは高くなります。
日本は輸入に頼っている
円安が生活にどう関わってくるかを理解するには、日本が食べる物もエネルギーも、多くを海外からの輸入に頼っているという事実を押さえておく必要があります。
食料自給率(国内で消費する食料のうち、国内での生産でまかなえている割合)は、カロリーベースで38%です。言い換えると、私たちが摂取するカロリーの6割以上は、輸入に頼っている計算になります。金額ベースで見ると61%とやや違う数字になりますが、これは価格の高い輸入品や加工品の扱い方の違いによるものです。
エネルギーの自給率はさらに低く、およそ13%にとどまります。石油・石炭・天然ガスのほとんどを、海外からの輸入でまかなっています。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 食料自給率(カロリーベース) | 38% |
| 食料自給率(生産額ベース) | 61% |
| エネルギー自給率 | およそ13% |
出典: 農林水産省「食料自給率」2023年度、資源エネルギー庁
これだけ輸入への依存度が高いからこそ、円安は他の多くの国よりも直接、日本の値札に響きます。
円安が値札に届くまで
円安が、どのような経路をたどって私たちの値札まで届くのか、追いかけてみましょう。
原油はほぼ全量を輸入しているため、円安になると円建ての仕入れ値が上がります。すると発電のコストが上がって電気代に反映され、トラックの燃料費が上がって輸送費にも波及します。同じように、輸入小麦の値段が円安で上がれば、パンやうどんの原材料費が上がります。なぜ物価は上がるのかで見た「作る費用が増えると値段が上がる」という経路の入り口に、多くの場合、円安があります。
2026年3月には、1ドル=160円に迫る場面がありました(日本経済新聞)。輸入コストの上昇を通じて、電気代や食品の価格にも影響が及んだとみられています。
円安は悪者なのか
ここまで読むと、円安には困った面ばかりがあるように感じるかもしれません。ですが、円安には追い風の面もあります。
海外で商品を売る輸出企業にとっては、外貨で得た売上を円に換算すると金額が増えるため、業績にプラスに働きやすくなります。日本を訪れる外国人観光客にとっても、自国のお金でより多くの円に交換できるため、日本での買い物や旅行が割安に感じられ、消費が増えやすくなります。
一方で、輸入品を多く使う家計や、原材料を輸入に頼る企業にとっては、コスト増という向かい風です。円安は、日本経済全体で見れば「誰もが損をする」わけでも「誰もが得をする」わけでもなく、立場によって損得が分かれる現象だと言えます。値上がりした物価に見合うだけ賃金が上がるかどうかも、生活の実感を左右する大きな要素です。この点は賃金と物価の関係で詳しく見ていきます。
ここからは、基礎の一歩先の話です。読み飛ばしても本筋は追えます。
お金は、金利の高い方に向かいやすい
なぜ、これほど円安が進んだのでしょうか。理由はいくつも重なっていますが、入口として知っておきたいのが金利差です。お金は、同じ預けるなら金利の高い通貨に向かいやすいという性質があります。日本の金利が海外に比べて低い状態が続くと、円で持っているよりドルなど金利の高い通貨で持ったほうが有利だと考える動きが強まり、円を売ってドルなどを買う取引が増えます。これが円安の一因になっていると考えられています。
金利がどのように決まり、為替にどう影響していくのかは、金融政策を扱う章で、あらためて取り上げる予定です。
このまま円安が進むと、自分の生活で最初に変化を感じるのはどこだと思いますか?
ヒント: 「円安が値札に届くまで」の経路を、自分のよく買う物に当てはめて考えてみましょう。
円安で得をしているのは誰でしょうか? 具体的に挙げてみましょう。
ヒント: 「円安は悪者なのか」で挙げた、輸出企業や訪日客の例を手がかりにしてみましょう。