人口減少は経済にどう効くのか

Population and Economy

生産年齢人口と働き手で見たとおり、日本の働き手の中心となる年齢層は、これから数十年にわたって減り続けていきます。この人口の変化は、経済にどのような形で効いてくるのでしょうか。ここでは「作る力」「買う力」「賃金」という3つの角度から見ていきます。

作る力への影響 ― 働き手が減るということ

モノやサービスを生み出すには、働く人が必要です。生産年齢人口が減るということは、企業がモノを作ったり、サービスを提供したりするための働き手そのものが不足していくということでもあります。これを経済学では供給の制約(作りたくても、それを担う人手が足りず、生産量を増やせない状態)と呼びます。

飲食店が「人手が足りず営業時間を短縮する」、工場が「求人を出しても応募が来ない」といった話は、雇用と人手不足という現場の問題であると同時に、その土台には働き手の総数が減っているという人口の構造があります。

買う力への影響 ― 消費者も減るということ

人口が減るということは、働き手が減るだけでなく、モノやサービスを買う消費者の数も減るということです。企業から見れば、国内の顧客の総数がじわじわと縮んでいくことを意味します。

1人あたりの購入額が変わらなくても、買う人の頭数が減れば、国内市場全体の規模は小さくなっていきます。国内向けの商売を続けてきた企業が、海外に販路を広げたり、1人あたりの購入額を増やす工夫(付加価値の高い商品を提案するなど)に力を入れたりする背景には、こうした国内市場の縮小という事情があります。

人手不足は賃金をどう動かすか ― 確保するための賃上げ圧力

働き手が減り、企業同士で人を取り合う状況になると、何が起きるでしょうか。人を確保するために、賃金を上げて働き手を惹きつけようとする力が働きます。需要と供給の関係で言えば、働き手という「供給」が細っていく中で、企業側の「欲しい」という需要は変わらない、あるいはむしろ強まっているため、賃金という価格が上がりやすくなる、という理屈です。

2025年度の最低賃金は全国加重平均で1,121円となり、前年から66円という過去最大の引き上げ幅を記録しました。初めて全都道府県で1,000円を超えたこの動きの背景にも、人手不足という構造があります。賃金がどのように決まっていくかは、需要と供給だけでなく、労使の交渉や法律による下限も関わる、もう一段細かい話になりますが、その土台に人口の変化があることは押さえておきたいところです。

もっと深く ― 人口減少=経済衰退、とは単純には言えないDEEP DIVE

ここからは、基礎の一歩先の話です。読み飛ばしても本筋は追えます。

全体の合計ではなく、1人あたりで見る

「人口が減る=日本経済は衰退する」というイメージは、半分正しく、半分は視点が抜けています。国全体のGDP(1年間に生み出されたモノやサービスの価値の合計)は、働き手が減れば増えにくくなるかもしれません。しかし、私たちの暮らしの豊かさを測るなら、合計額そのものよりも、一人当たりGDP(GDPを人口で割った数値)の方が実感に近い指標です。

極端な例で考えると分かりやすくなります。人口が半分になっても、GDPの合計額が半分より減り方が緩やかであれば、1人あたりの取り分はむしろ増える計算になります。人口減少がそのまま「1人ひとりが貧しくなる」ことを意味するとは限らない、という視点は、この先の章でも繰り返し出てきます。

考えてみるTHINK
Q1

人口が減っても、1人あたりの豊かさを保つには何が必要でしょうか?

ヒント: 「もっと深く」で見た、GDPを人口で割るという式を思い出してみましょう。分母と分子、どちらに手を打つ方法があるでしょうか。

Q2

身の回りで「人手不足が理由で変わったこと」を探してみましょう。

ヒント: 営業時間の短縮、セルフレジの導入、無人店舗など、思い当たる例はないでしょうか。

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