一人当たりGDP

GDP per Capita

国の合計と、1人あたりは別の話 ― クラスの合計点と平均点

クラス40人で試験をして、合計点が3,200点だったとします。この数字だけでは「学力の高いクラスだ」とは言い切れません。1人あたりに直すと80点。もし10人のクラスで合計点が900点なら、1人あたりは90点になり、こちらの方が平均は高い計算になります。合計の大きさと、1人あたりの大きさは、別の話だということです。

お金はどのように動いているのかで見たように、経済全体を流れるお金の大きさを測る数字がGDP(国内総生産。国内で新しく生み出された価値の合計)でした。日本のGDP総額は、世界で5位です(IMF、2025年)。人口の多い国ほど、働く人や消費する人の数も多いので、合計が大きくなりやすい面があります。

そこで、GDPの合計を人口で割った数字を一人当たりGDP(GDPの総額を、その国の人口で割った数字)と呼びます。国どうしの「豊かさ」を比べるときは、合計だけでなく、この一人当たりの数字も合わせて見る必要があります。

日本は35,973ドル・世界37〜38位 ― 総額は5位なのに起きる「ねじれ」

では、日本の一人当たりGDPはいくらでしょうか。IMF(国際通貨基金)の2025年の統計によると、日本の一人当たりGDPは35,973ドルで、世界37〜38位です。GDP総額では世界5位の日本が、一人あたりで見ると、順位がぐっと下がります。

他の国と比べてみましょう。

一人当たりGDP出典・時点
米国89,991ドル(日本の約2.5倍)IMF、2025年
台湾39,489ドルIMF、2025年
韓国36,227ドルIMF、2025年
日本35,973ドルIMF、2025年

米国は日本の約2.5倍、台湾・韓国にも及びません。GDP総額は世界5位なのに、一人当たりではG7(先進7か国)の中で最下位という「ねじれ」が、ここに表れています。日本は人口が多いために合計は大きくなりますが、一人ひとりに割り振ると、順位が入れ替わるのです。

順位を下げた2つの要因 ― 円安と、成長率の差

なぜ日本の一人当たりGDPの順位は下がってしまったのでしょうか。大きく2つの要因が関係しています。

1つ目はドル換算のための円安の影響です。国どうしの比較では、それぞれの国の数字をいったんドルに換算してから並べます。日本円で見た所得が同じでも、円安が進むと、ドルに直したときの金額は目減りしてしまいます。財布の中身は変わっていないのに、ものさしをドルに替えた途端、目盛りが小さく見えるようなものです。

2つ目は経済成長率の差です。名目GDPと実質GDP・経済成長率で見たように、日本の実質成長率は2025年度で+0.8%でした。成長を続ける他国との差が積み重なると、順位にも影響します。

なお、一人当たりGDPは人口の規模とも切り離せない話です。この点は、人口の章で改めて扱う予定です。

もっと深く ― 購買力平価という別のものさしDEEP DIVE

ここからは、基礎の一歩先の話です。読み飛ばしても本筋は追えます。

為替レートだけが、比べ方ではない

ここまで見てきた比較は、実際の為替レートでドルに換算する方法でした。しかしこの方法には弱点があります。為替レートは、貿易や投資の動きで日々動くため、比較のたびに順位が揺れてしまうのです。

そこで使われるのが、購買力平価(同じモノやサービスを、それぞれの国でどれだけのお金で買えるかを基準にして換算する方法)というものさしです。「同じハンバーガーが、日本では何円で、米国では何ドルで買えるか」を基準に換算すると、実際の暮らしの豊かさに近い比較ができると言われています。

国際機関の統計では、為替レート換算の順位と、購買力平価換算の順位が、あわせて公表されていることがあります。ニュースで一人当たりGDPの順位を見るときは、どちらの方法で計算された数字かを確かめると、数字の意味をより正確につかめます。

考えてみるTHINK
Q1

「世界5位」と「37〜38位」、どちらの数字が自分の生活の実感に近いでしょうか?

ヒント: 自分の給料や物価の感覚は、国全体の合計と、一人あたりの数字、どちらに近いか考えてみましょう。

Q2

円安がさらに進むと、日本の一人当たりGDPのドル建ての順位はどうなるでしょうか?

ヒント: 「順位を下げた2つの要因」で見た、ドル換算の仕組みを思い出してみましょう。

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