名目GDPと実質GDP・経済成長率
Nominal and Real GDP金額が増えても、量が増えたとは限らない ― りんごの値上がりで確かめる
GDPとは何かで見たように、GDPは1年間に国内で新しく生み出された価値の合計です。ただし、この金額の増減を読むときには注意が必要です。金額が増えても、実際に作られたモノやサービスの量が増えたとは限らないからです。
あるりんご農家の例で確かめてみましょう(説明のための架空の例です)。去年は、りんごを100個収穫し、1個100円で売りました。売上は1万円です。今年も同じ畑で100個のりんごを収穫しましたが、値段が1個110円に上がりました。売上は1万1,000円です。
売上(金額)は1万円から1万1,000円に増えました。しかし、収穫できたりんごの数は100個のまま変わっていません。増えたのは、りんごの値段だけです。
金額をそのまま合計したものを名目GDP(その年その年の価格で測ったGDP)と呼びます。一方、値段の変動を取り除き、同じ物差し(価格)で測り直したものを実質GDP(物価の変動を除いた、モノやサービスの量の変化を表すGDP)と呼びます。りんごの例で言えば、名目の売上は1万円から1万1,000円に増えましたが、去年の値段(1個100円)で測り直した実質の売上は1万円のままです。
2025年度の数字で確かめる ― 名目+4.2%、実質+0.8%
この名目と実質の差を、実際の日本経済の数字で確かめてみましょう。2025年度の日本の名目GDP成長率は+4.2%でした。GDPとは何かで見た約670兆円という金額の伸び率です。一方、同じ2025年度の実質GDP成長率は+0.8%でした(内閣府)。
| 指標 | 2025年度 | 出典 |
|---|---|---|
| 名目GDP成長率 | +4.2% | 内閣府 |
| 実質GDP成長率 | +0.8% | 内閣府 |
名目は+4.2%なのに、実質は+0.8%。この差の多くは、モノやサービスの値段そのものが上がったことによるものです。りんごの例で言えば、収穫量(実質)はほとんど増えていないのに、値段が上がった分だけ売上(名目)が大きく伸びた、という状況に近いといえます。
経済成長率の読み方 ― ニュースの数字は、名目か実質か
ニュースで「経済成長率」という言葉を聞いたとき、それが名目の数字なのか、実質の数字なのかを確かめる習慣を持つと、数字の意味を取り違えずに済みます。同じ「経済成長率+4.2%」という見出しでも、名目なのか実質なのかで、意味がまったく違うからです。
経済の実力、つまり実際にどれだけのモノやサービスが作られるようになったかを見たいときは、物価の影響を取り除いた実質の数字で見るのが基本です。
プラスの成長率は、実質GDPの量が前の年より増えたことを意味し、マイナスの成長率は、減ったことを意味します。プラスが続けば経済は拡大方向に、マイナスが続けば縮小方向にあると読めます。
ここからは、基礎の一歩先の話です。読み飛ばしても本筋は追えます。
名目GDPと実質GDPを、割り算で組み合わせると、経済全体の物価の動きを表す指数を作ることができます。これをGDPデフレーター(名目GDPを実質GDPで割って求める、経済全体の物価水準を表す指数)と呼びます。
りんごの例で確かめる
さきほどのりんご農家の例で言えば、名目の売上1万1,000円を、実質の売上1万円で割ると1.1になります。りんごの値段が10%上がったことが、この1.1という数字にそのまま表れています。GDPデフレーターは、これを国全体のあらゆる財・サービスについて行った、いわば経済全体の値札の伸び率です。
CPIとの違い
物価を測る指数には、物価とインフレ率のページで扱う消費者物価指数(CPI)もあります。CPIが私たちの買い物かごに入る品目を中心に測るのに対し、GDPデフレーターは輸出入も含めた国内総生産全体をカバーする点が違います。どちらも「物価がどれだけ動いたか」を見るための、別の物差しです。
名目GDPが増えて、実質GDPがほぼ横ばいだった年、私たちの暮らしは良くなったと言えるでしょうか?
ヒント: りんご農家の例で、売上が増えても収穫量が変わらなかったことを思い出してみましょう。
ニュースで「過去最高のGDP」という見出しを見たとき、それが名目か実質か、どうすれば確かめられるでしょうか?
ヒント: このページで扱った2025年度の2つの数字(+4.2%と+0.8%)のどちらに近いか、記事中の数字と照らし合わせてみましょう。