少子高齢化とGDP・社会保障
Impact of Aging Societyこれまで、日本の総人口が減っていくペース、高齢化率29.4%が意味するもの、生産年齢人口の先細りを、それぞれ見てきました。ここでは、この人口の変化が、経済全体の大きさを示すGDPと、暮らしを支える社会保障に、それぞれどう効いてくるのかを整理します。
支え手の変化を、ひとつの数字で見る
高齢化のインパクトは、ひとつの数字によく表れています。65歳以上の人を、何人の現役世代(15〜64歳)で支えているかという比率です。2020年時点では、65歳以上1人を現役世代2.1人で支えていました。これが、2070年には65歳以上1人を現役世代1.3人で支える計算になると推計されています(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」令和5年推計)。
2.1人で支える社会は、大勢で1人を担ぎ上げる騎馬戦に近い体制です。1.3人で支える社会は、ほぼ1人が1人を背負う肩車に近づきます。担ぐ人数が減れば、1人あたりの負担は重くなります。高齢化率29.4%という数字の背景には、この支え手の変化があります。
GDPへの効き方
経済全体の生産量を示すGDPは、大まかに言えば「働く人の数」と「一人ひとりが生み出す価値(生産性)」のかけ算で決まります。生産年齢人口が減り続けるということは、働き手の数という面では、GDPにとって逆風が吹き続けるということです。
ただし、これは「人口が減れば経済は必ず縮む」という単純な話ではありません。生産性とは何かで扱うように、一人あたりが生み出す価値を高めることができれば、働き手の減少を補う道は残されています。人口という分母の変化と、生産性という分子の変化。この両面を見なければ、GDPへの効き方は正しく読めません。
社会保障への効き方
社会保障給付費138兆円という金額は、年金・医療・介護などの制度を1年間動かすためにかかる費用の合計です。この金額の大きさそのものが、実は人口構造をそのまま映し出しています。65歳以上の人口が増えれば、年金や医療・介護の給付は増えます。一方で、その財源の多くを支える現役世代の保険料や税収は、生産年齢人口の減少とともに伸び悩みます。
つまり、社会保障の給付費が大きくなる理由と、それを支える力が弱くなる理由は、どちらも同じ人口の変化から生まれています。給付費という一つの金額の背後には、支え手が2.1人から1.3人へ変わっていく構図が、そのまま重なっているのです。
ここからは、基礎の一歩先の話です。読み飛ばしても本筋は追えます。
ボーナスから、オーナスへ
人口構成が経済に追い風として働く局面を人口ボーナス(生産年齢人口の割合が高く、経済成長を後押ししやすい人口構成の状態)と呼びます。日本もかつて、高度経済成長期からバブル期にかけて、この人口ボーナスの恩恵を受けていた時期がありました。
逆に、高齢者の割合が増え、支え手である現役世代の割合が減ることで、人口構成そのものが経済の重荷になっていく局面を人口オーナス(生産年齢人口の割合が低下し、人口構成が経済成長の重荷になる状態)と呼びます。オーナス(onus)とは、英語で「重荷」「負担」を意味する言葉です。日本は今、この人口オーナスの局面にあると位置づけられています。
人口構成は、良い悪いという評価の対象というより、経済を考えるうえでの前提条件です。今どちらの局面にいるかを知っておくことが、ニュースの数字を読むうえでの土台になります。
「支え手を増やす」には、どんな選択肢がありうるでしょうか?
ヒント: 支え手=現役世代の人数そのものを増やす方法と、支える力(生産性や制度)を強くする方法、両方の角度から考えてみましょう。
社会保障の議論と人口の議論が、実は同じ話である理由を、自分の言葉で説明してみてください。
ヒント: このページで見た「給付費」と「支え手の比率」が、同じ変化のどちらの面を見ているかを思い出しましょう。