カプセル化で「セグメント→パケット→フレーム→ビット」とヘッダーが積み重なっていく様子を学びましたが、それを「絵」として実際に見る方法があるとしたら、試してみたくありませんか?
Packet Tracerには、通信を1コマずつ止めて中身をのぞける特別なモードがあります。今日はそれを使います。
この演習でできるようになること
- Packet Tracerの「シミュレーションモード」に切り替えて操作できる
- pingパケットが1ホップずつ進む様子をイベントリストで確認できる
- パケットの詳細ウィンドウで、各レイヤーのヘッダーが積み重なる様子(カプセル化)を確認できる
使用トポロジ
前回作った構成と同じく、PC0とPC1をSwitch 2960でつないだ最小構成のLANを使います。今回は通信を「リアルタイムモード」ではなく「シミュレーションモード」で実行し、pingパケットの中身をステップごとに開いて観察します。
準備
- 前回同様、PC0(
192.168.1.1/24)とPC1(192.168.1.2/24)をSwitch 2960にストレートケーブルで接続した状態を用意します(前回のファイルを開いても構いません)。 - 画面右下にある「Realtime」「Simulation」の切り替えタブから、Simulationをクリックします。画面右側に「Simulation Panel」が表示されます。
- Simulation Panelの「Event List Filters」で「Edit Filters」を開き、まずは
ICMPのみにチェックを入れておくと、pingに関する動きだけに絞って観察できます。
手順
- PC0をクリックし、「Desktop」タブから「Command Prompt」を開きます。
ping 192.168.1.2と入力し、Enterキーを押します。この時点ではリアルタイムに実行されず、パケットが画面上に封筒アイコンとして現れ、動きが止まった状態になります。- Simulation Panelの「Play」ボタン(再生アイコン)ではなく、「Capture / Forward」ボタン(1コマ送りのボタン)を1回クリックします。PC0の上に封筒アイコンが現れます。
- 封筒アイコンをクリックすると、「PDU Information at Device: PC0」という詳細ウィンドウが開きます。「OSI Model」タブを選びます。
- 「Out Layers」の欄を上から順に確認します。Layer 3(IP)でパケットが作られ、Layer 2(イーサネット)でフレームにカプセル化され、Layer 1(物理層)でビットとして送出される様子が、レイヤーごとに表示されます。
- ウィンドウを閉じ、「Capture / Forward」をもう一度クリックして、パケットがスイッチを経由してPC1に届くまで、1コマずつ進めます。
確認
Simulation Panelのイベントリストには、次のような記録が積み上がっていきます。
Vis. Time Last Device At Device Type
0.000 - PC0 ICMP
0.001 PC0 Switch0 ICMP
0.002 Switch0 PC1 ICMP
0.003 PC1 Switch0 ICMP
0.004 Switch0 PC0 ICMP
PDU詳細ウィンドウの「OSI Model」タブでは、PC0側の送信時に次のような積み上がりが確認できます。
Layer 7-5 (アプリケーション~セッション:今回は省略)
Layer 4 Segment(ICMPはUDP/TCPを使わないため簡略表示)
Layer 3 Packet(送信元 192.168.1.1 → 宛先 192.168.1.2)
Layer 2 Frame(送信元MAC → 宛先MAC)
Layer 1 Bits
合格チェックリスト
- シミュレーションモードに切り替え、Event List Filtersで ICMP を選択できている
- 「Capture / Forward」でパケットを1コマずつ進められる
- PDU詳細ウィンドウの「OSI Model」タブで、Layer 3→Layer 2→Layer 1の順にヘッダーが積み重なる様子を確認できた
- 最終的にPC1まで封筒アイコンが到達し、応答がPC0に戻ってくる
つまずきポイント
ひとつめは、Event List Filtersを絞らずに実行してしまうことです。フィルタなしだとARPやDNSなど関係のないイベントも大量に表示され、何を見ればいいか分からなくなります。まずICMPだけに絞る癖をつけましょう。
ふたつめは、「Play」ボタンを押してしまい、一気に最後まで進んでしまうことです。カプセル化を「観察」するのが目的なので、必ず「Capture / Forward」で1コマずつ進めてください。
みっつめは、封筒アイコンをクリックするタイミングを逃すことです。1コマ進めるたびに封筒の位置が変わるため、クリックし忘れると次のコマで消えてしまいます。1コマ進めたら、すぐにクリックして中身を確認する、という順番を守りましょう。
シミュレーションモードでPDU詳細ウィンドウの「OSI Model」タブを確認したとき、Layer 2で扱われている情報として正しいものはどれでしょう?
答えを見る
送信元MACアドレスと宛先MACアドレスを含んだフレームです。Layer 3ではIPアドレスを使ったパケットが作られ、その外側にLayer 2でMACアドレスを使ったフレームのヘッダーが付与されます。これがカプセル化の実際の姿です。
概念でしか知らなかったカプセル化が、画面の中で本当に「積み重なっていく」のを見ると、一気に腑に落ちるよね。Layer 3のパケットにLayer 2のヘッダーが付いてフレームになる——この順番、もう体に入ったはず。次はいよいよ、そのLayer 2の主役「イーサネット」を詳しく見ていくよ。