第1章 1-6 / データの記述と要約

標準化・変動係数・指数化

1. 標準化(zスコア)─ 共通のものさしに乗せる

標準化とは、データの値を変換して平均 $0$・標準偏差 $1$ という共通のものさしに乗せ替える操作です。得られた値をzスコア(または z値)と呼びます。記号では、データの値を $x$、平均を $\bar{x}$、標準偏差を $s$ として次のように書きます。

FORMULA — 試験に出る式 $$z = \frac{x - \bar{x}}{s}$$

分子の $x-\bar{x}$ は偏差(平均からのズレ)です。それを標準偏差 $s$ で割っているので、zスコアは「平均から標準偏差の何個分離れているか」を表します。

なぜ平均0・標準偏差1になるのか

この変換は $z = \frac{1}{s}x - \frac{\bar{x}}{s}$ という1次式(線形変換)です。$x$ から定数 $\bar{x}$ を引くと平均はその分だけ下がり、$s$ で割るとばらつきは $s$ 分の1に縮みます。だから、変換後の平均と標準偏差は次のように動きます。 $$ \begin{aligned} \text{平均:} &\quad \frac{\bar{x} - \bar{x}}{s} = 0\\[4pt] \text{標準偏差:} &\quad \frac{s}{s} = 1 \end{aligned} $$ 平均を引けば中心が $0$ に、標準偏差で割ればばらつきが $1$ に。どんな単位・規模のデータでも、標準化すれば必ず平均0・標準偏差1にそろう、というのがポイントです。

zスコアの読み方

Bさんの結果が、英語75点(平均60点・標準偏差10点)、数学85点(平均80点・標準偏差5点)だったとします。生の点数は数学のほうが高いですが、相対的にはどちらが上でしょうか。

英語:$z = \dfrac{75-60}{10} = 1.5$、数学:$z = \dfrac{85-80}{5} = 1.0$。zスコアでは英語($1.5$)>数学($1.0$)。

平均から標準偏差の何個分離れているかというクラスの中での立ち位置で見ると、英語のほうが優れた成績だったとわかります。生の点数だけ見ていると逆の判断をしてしまうところでした。

2. 偏差値 ─ zスコアを使いやすく直したもの

zスコアは便利ですが、$-2$〜$+2$ あたりの小数で、マイナスも出るため日常では少し扱いづらい。そこで、zスコアを平均50・標準偏差10のものさしに乗せ替えたものが、おなじみの偏差値です。

偏差値の正体は、いわばお化粧したzスコア。$z$ を $10$ 倍して $50$ を足しただけなので、偏差値70は $z=+2$、つまり「平均より標準偏差2個分も上」という、けっこうすごい順位だと式から見えてきます。

FORMULA — 試験に出る式 $$\text{偏差値} = 10z + 50$$

zスコアを $10$ 倍して $50$ を足すだけ。これも1次式なので、偏差値の平均は $50$、標準偏差は $10$ になります(標準化の逆の発想です)。

平均60点・標準偏差15点のテストで偏差値を計算してみましょう。

得点 $x$zスコア偏差値 $10z+50$
75点$\frac{75-60}{15}=+1.0$60
60点$\frac{60-60}{15}=0$50
45点$\frac{45-60}{15}=-1.0$40

平均ちょうどなら偏差値50、標準偏差1個分上なら偏差値60、1個分下なら偏差値40。「偏差値60=平均より1標準偏差ぶん上」と読めると、数字の意味がぐっと立体的になりますね。

3. 変動係数 ─ 単位によらない相対的なばらつき

zスコアが「個々の値の相対化」だったのに対し、変動係数(CV:Coefficient of Variation)はデータセット全体のばらつきの相対化です。標準偏差 $s$ を平均 $\bar{x}$ で割って求めます。

FORMULA — 試験に出る式 $$\text{CV} = \frac{s}{\bar{x}}$$

$100$ 倍してパーセントで表すこともよくあります:$\text{CV}(\%) = \dfrac{s}{\bar{x}} \times 100$。

なぜ変動係数が必要なのか

標準偏差は「絶対的なばらつき」を、もとの単位のまま表します。だから「標準偏差50万円」だけでは、それが大きいのか小さいのか判断できません。平均がいくらかによるからです。

標準偏差を平均で割ると、分子・分母の単位(万円)が打ち消し合って単位のない比率になり、規模の違うデータどうしを公平に比べられます。

A支店(平均売上500万円・標準偏差50万円)とB支店(平均売上200万円・標準偏差30万円)で、どちらが相対的にばらついているか考えてみましょう。A支店:$\text{CV} = \dfrac{50}{500} = 0.10\ (10\%)$、B支店:$\text{CV} = \dfrac{30}{200} = 0.15\ (15\%)$。

標準偏差だけ見るとA(50万円)のほうが大きく見えますが、規模をそろえるとB支店(15%)のほうが相対的に揺れているとわかります。A支店は規模が大きいぶん、絶対値の標準偏差が大きく見えていただけ、というわけです。

標準偏差は絶対的なばらつき、変動係数は相対的なばらつき。規模や単位の違うデータのばらつきを公平に比べたいときは変動係数を使います。ただし、平均が0に近い・負の値を含むデータでは使えません(気温や赤字を含む利益など、割り算が破綻するためです)。

4. 指数化 ─ 基準を100にそろえて推移を見る

最後は指数化です。ある時点(または対象)を基準=100と決め、ほかの値がその何倍かを $100$ 倍で表す方法です。物価指数や株価指数でおなじみの考え方ですね。基準とする値を $x_0$ とすると、 $$\text{指数} = \frac{x}{x_0} \times 100$$ 基準の年(または対象)では $\dfrac{x_0}{x_0}\times 100 = 100$ になります。$110$ なら基準より $10\%$ 増、$90$ なら $10\%$ 減、と基準から何%動いたかで直感的に読めるのが利点です。

ある店の年間売上(万円)を、2020年を基準($x_0=2500$)として指数化してみましょう。

売上指数(2020=100)読み方
20202500100基準
20212750110基準比 +10%
20223000120基準比 +20%
2023225090基準比 −10%

たとえば2022年は $\dfrac{3000}{2500}\times 100 = 120$。生の金額を追うより、「基準から何%動いたか」が一目でわかります。単位の違う複数の系列(売上と来客数など)を $100$ にそろえて重ねれば、伸び方の比較もしやすくなります。

5. 3つの道具の使い分け

似たような「相対化」の道具がそろったので、いつ何を使うかを整理しておきましょう。

道具そろえるもの使いどころ
標準化(zスコア)$z=\dfrac{x-\bar{x}}{s}$平均0・標準偏差1個々の値の相対的な位置を比べる
偏差値$10z+50$平均50・標準偏差10zスコアを読みやすく表示する
変動係数$\dfrac{s}{\bar{x}}$単位を消した比率規模の違うデータのばらつきを比べる
指数化$\dfrac{x}{x_0}\times 100$基準=100基準からの増減・推移を比べる

合言葉は個々の位置なら標準化、全体のばらつきなら変動係数、推移なら指数化。どれも生の数字に潜む「規模・単位のワナ」を外してくれる道具です。比較の前に、まず土俵をそろえる──この習慣が2級以降の分析でずっと効いてきます。

CHECK TEST — 確認テスト

この章の理解度チェック

答えを開く前に、必ずノートに手で書いてください。書いてから答え合わせをすることで、試験本番でも同じ判断がすぐにできるようになります。

Q1zスコアの式を書き、それが表す意味を答えてください。
$z=\dfrac{x-\bar{x}}{s}$ です。データの値から平均を引いた偏差を、標準偏差で割ったもので、「平均から標準偏差の何個分離れているか」を表します。
Q2英語75点(平均60点・標準偏差10点)と数学85点(平均80点・標準偏差5点)、zスコアで比べるとどちらが優れた成績ですか?
英語です。英語のzスコアは $\frac{75-60}{10}=1.5$、数学は $\frac{85-80}{5}=1.0$ で、英語(1.5)>数学(1.0)となり、生の点数は数学が高くても相対的には英語のほうが上と判断できます。
Q3偏差値の式を答え、偏差値70はzスコアでいくつに相当するか計算してください。
偏差値 $=10z+50$ です。偏差値70なら $70=10z+50$ より $z=2$、つまり平均より標準偏差2個分も上という、かなり高い順位を表します。
Q4A支店(平均500万円・標準偏差50万円)とB支店(平均200万円・標準偏差30万円)、変動係数で比べるとどちらが相対的にばらついていますか?
B支店です。A支店のCVは $\frac{50}{500}=0.10$(10%)、B支店は $\frac{30}{200}=0.15$(15%)で、標準偏差の絶対値はAのほうが大きくても、規模をそろえるとBのほうが相対的に揺れています。
Q5標準化・変動係数・指数化は、それぞれどんな場面で使い分けますか?
個々の値の相対的な位置を比べたいときは標準化(zスコア)、データセット全体の相対的なばらつきを比べたいときは変動係数、基準からの増減・推移を見たいときは指数化を使います。

次回 1-7 5数要約と外れ値 では、最小値・四分位数・最大値の5つでデータの輪郭をつかみ、$1.5\times \text{IQR}$ で外れ値を判定する方法、そして箱ひげ図との対応を学びます。

さえちゃん
さえ

標準化・偏差値・変動係数・指数化、ぜんぶ「比べるために土俵をそろえる」仲間だよ。zスコアの式 $z=\frac{x-\bar{x}}{s}$ は第2章の正規分布でも大活躍するから、今のうちに手で書けるようにしておいてね!

HANDWRITING — 紙に書いてインプットしよう!

このページに出てきた重要キーワードです。ページを閉じる前に、声に出しながら紙に手で書いてみてください。手を動かすと、読むだけの何倍も速く記憶に定着します。

  • 標準化
  • 平均0・標準偏差1
  • zスコア
  • 平均50・標準偏差10
  • 偏差値
  • 変動係数
  • 絶対的なばらつき
  • 相対的なばらつき
  • 指数化
  • 基準=100