第1章 1-7 / データの記述と要約

5数要約と外れ値

1. 5数要約とは ─ 5つの位置でデータをつかむ

5数要約とは、データを小さい順に並べたときの、次の5つの値をまとめたものです。累積でいうと、$0\%$、$25\%$、$50\%$、$75\%$、$100\%$ の位置にある値、と言い換えられます。

順序名前記号累積の位置
最小値Min0%
第1四分位数$Q_1$25%
中央値(第2四分位数)$Q_2$50%
第3四分位数$Q_3$75%
最大値Max100%

第2四分位数 $Q_2$ は中央値そのものです。$Q_1$ はデータの下半分の真ん中、$Q_3$ は上半分の真ん中、と考えるとつかみやすいですよ。これら3つ($Q_1,\,Q_2,\,Q_3$)でデータを4等分する区切りができ、両端の最小・最大を加えて5数要約になります。

四分位範囲(IQR)

$Q_1$ と $Q_3$ の間の幅を四分位範囲(IQR:Interquartile Range)と呼びます。データの中央 $50\%$ が収まる幅です。 $$\text{IQR} = Q_3 - Q_1$$ IQRは外れ値の影響を受けにくいばらつきの指標です。最大値・最小値は1つの極端な値で大きく動きますが、$Q_1$ と $Q_3$ は真ん中の50%に注目するので安定しています。

2. 数値例で5数要約を求める

次の11個のデータ(あるサービスの月別問い合わせ件数)で、5数要約を求めてみましょう。すでに小さい順に並んでいます。

35, 42, 48, 50, 55, 58, 60, 63, 68, 72, 150($n=11$)

中央値($Q_2$)

$n=11$ は奇数なので、ちょうど真ん中の6番目の値が中央値です。下から数えて6番目は 58。これが $Q_2$ です。

$Q_1$ と $Q_3$

中央値を境に、下半分と上半分に分けます(中央値そのものはどちらにも入れません)。下半分は「35, 42, 48, 50, 55」の5個、その真ん中(3番目)が $Q_1 = \mathbf{48}$。

上半分は「60, 63, 68, 72, 150」の5個、その真ん中が $Q_3 = \mathbf{68}$ です。下半分の中央値がQ1、上半分の中央値がQ3。データを並べて指で押さえながら数えると迷いません。

5数要約
最小値35
第1四分位数 $Q_1$48
中央値 $Q_2$58
第3四分位数 $Q_3$68
最大値150

四分位範囲は $\text{IQR} = Q_3 - Q_1 = 68 - 48 = \mathbf{20}$。中央50%の件数は20件の幅に収まっています。一方で最大値の150は、$Q_3=68$ からずいぶん離れていますね。これが外れ値かどうかを、次のルールで判定します。

3. 外れ値の判定 ─ 1.5×IQR ルール

外れ値(outlier)とは、ほかの多くのデータから極端に離れた値のこと。判定にはいくつか流派がありますが、もっとも広く使われるのが$1.5\times\text{IQR}$ ルールです。$Q_1$ と $Q_3$ から IQR の $1.5$ 倍ぶん外側に「フェンス(柵)」を張り、それを越える値を外れ値とみなします。

FORMULA — 試験に出る式 $$ \begin{aligned} \text{下側フェンス:}&\quad Q_1 - 1.5 \times \text{IQR} \ \text{より小さい値}\\[2pt] \text{上側フェンス:}&\quad Q_3 + 1.5 \times \text{IQR} \ \text{より大きい値} \end{aligned} $$

$Q_1$・$Q_3$ から IQR の $1.5$ 倍ぶん外側に「フェンス(柵)」を張り、そのいずれかを越える値を外れ値と判定します。

数値例での判定

先ほどの例($Q_1=48,\ Q_3=68,\ \text{IQR}=20$)でフェンスを計算すると、 $$ \begin{aligned} \text{下側フェンス} &= Q_1 - 1.5\times\text{IQR} = 48 - 1.5\times 20 = 48 - 30 = 18\\[2pt] \text{上側フェンス} &= Q_3 + 1.5\times\text{IQR} = 68 + 1.5\times 20 = 68 + 30 = 98 \end{aligned} $$ フェンスは $18$ と $98$。$18$ より小さい値はなく、$98$ より大きい値は 150 だけ。よって150 が外れ値と判定されます。「なんとなく大きすぎる気がする」を、$1.5\times\text{IQR}$ ルールで数値的にきちんと示せました。

なお、$1.5$ という係数は経験的な目安です。3倍以上は極端な外れ値と呼ばれることもあります。また外れ値=即削除ではない点に注意してください。測定・入力ミスなら修正・除外、本物の特異値なら理由を考えて残す──「なぜこの値だけ違うのか?」を問うことが大切です。

4. 箱ひげ図との対応

5数要約と外れ値を、そのまま1つの絵にしたのが箱ひげ図(box plot)です。各パーツが5数要約のどこに対応するかを押さえれば、図と数字が一本につながります。

パーツ対応する値
箱の左端(下端)$Q_1$
箱の中の線中央値 $Q_2$
箱の右端(上端)$Q_3$
箱の長さ四分位範囲 IQR
ひげの先フェンス内に収まる最小・最大の値
外側の点外れ値(フェンスを越えた値)

先ほどのデータを箱ひげ図にすると、こうなります。150が「ひげの外の点」として描かれている点に注目してください。ひげの右端は外れ値を除いた最大値、つまり72で止まります。

0 40 80 120 160 問い合わせ件数 最小35 Q1=48 中央58 Q3=68 外れ値150

5数要約を視覚化した箱ひげ図。150 はひげの外に点として描かれる

箱ひげ図では箱=IQR、ひげ=外れ値を除いた範囲、点=外れ値。複数のグループを並べると分布の違いがひと目で比べられます。ただし多峰性は箱ひげ図では見えない(山が1つか2つかは判別できない)ので、ヒストグラムと併用するのが安全です。

CHECK TEST — 確認テスト

この章の理解度チェック

答えを開く前に、必ずノートに手で書いてください。書いてから答え合わせをすることで、試験本番でも同じ判断がすぐにできるようになります。

Q15数要約を構成する5つの値を、累積の位置(%)とあわせて答えてください。
最小値(0%)、第1四分位数 $Q_1$(25%)、中央値 $Q_2$(50%)、第3四分位数 $Q_3$(75%)、最大値(100%)です。
Q2データ 35, 42, 48, 50, 55, 58, 60, 63, 68, 72, 150($n=11$)の中央値、$Q_1$、$Q_3$ をそれぞれ求めてください。
中央値は下から6番目の58です。中央値を境に下半分「35,42,48,50,55」の真ん中がQ1=48、上半分「60,63,68,72,150」の真ん中がQ3=68となります。
Q3$Q_1=48,\ Q_3=68$ のとき、IQR と上側フェンスを計算し、150が外れ値かどうか判定してください。
IQR=68-48=20。上側フェンス=Q3+1.5×IQR=68+30=98。150は98より大きいため外れ値と判定されます。
Q4IQRが外れ値の影響を受けにくいのはなぜですか?
最大値・最小値は1つの極端な値だけで大きく動きますが、Q1・Q3はデータの真ん中50%に注目する値なので、両端に多少の外れ値があっても安定しているためです。
Q5箱ひげ図の「箱」「ひげ」「点」は、それぞれ5数要約の何に対応しますか?
箱はQ1〜Q3の範囲(IQR)、ひげは外れ値を除いた最小・最大までの範囲、点はフェンスを越えた外れ値に対応します。

次回 1-8 質的データの要約 では、カテゴリのデータを度数・相対度数・度数分布表でまとめ、棒グラフ・円グラフ・帯グラフで見せる方法と、それぞれの用途・注意点を整理します。

さえちゃん
さえ

5数要約・IQR・$1.5\times\text{IQR}$ ルール・箱ひげ図、ぜんぶ一本につながったね! 外れ値を見つけても、消す前に「なんで?」って考えるのが上達のコツだよ。次は質的データの要約に進むよ!

HANDWRITING — 紙に書いてインプットしよう!

このページに出てきた重要キーワードです。ページを閉じる前に、声に出しながら紙に手で書いてみてください。手を動かすと、読むだけの何倍も速く記憶に定着します。

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  • 四分位範囲(IQR)
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