第1章 1-12 / データの記述と要約

クロス集計表 — 周辺分布と条件付き分布

1. クロス集計表は「2変数の同時分布」

1つの質的変数を集計したものが度数分布表でした。クロス集計表(分割表ともいいます)は、2つの質的変数を組み合わせて、「どの組み合わせが何件あるか」を一覧にした表です。

各マス(セル)の数字は、行の条件と列の条件の両方を同時にみたす件数を表します。見るだけなら簡単そうですが、2級では割合をどの向きで出すかで意味がガラッと変わる、というのが今回のテーマです。

例として、ある講座の受講者200人について「性別」と「受講後に資格に合格したか」を集計したとします。

合格 不合格
男性4872
女性4238

左上の「48」は、男性かつ合格の人が48人いることを意味します。このように、2つの質的変数 $X$(性別)と $Y$(合否)が同時に取る値の組み合わせごとの度数を並べたものを、$X$ と $Y$ の同時度数分布と呼びます。

各度数を総数で割れば、各組み合わせの起こりやすさ(同時相対度数)になります。$r$ 行 $c$ 列のクロス集計表は「r×c表」と呼ばれ、上の表は $2 \times 2$ 表にあたります。

各セルの度数を $n_{ij}$、総数を $n$ と書くと、同時相対度数は $\dfrac{n_{ij}}{n}$ です。

2. 周辺度数と周辺分布

クロス集計表に行ごとの合計列ごとの合計を書き足してみましょう。これらを周辺度数(marginal frequency)と呼びます。表の「周辺(端)」に並ぶ度数だから、という覚え方でしたね。

合格 不合格 行和
男性4872120
女性423880
列和90110200

行和(男性120人・女性80人)は、合否を無視して性別だけを集計した分布です。列和(合格90人・不合格110人)は、性別を無視して合否だけを集計した分布です。このように、一方の変数を足し合わせて消し、もう一方の変数だけの分布に戻したものを周辺分布と呼びます。$X$ の周辺度数は $Y$ について足し集めて得られます。 $$n_{i\cdot} = \sum_{j} n_{ij}, \qquad n_{\cdot j} = \sum_{i} n_{ij}$$ ここで $n_{i\cdot}$ は第 $i$ 行の行和、$n_{\cdot j}$ は第 $j$ 列の列和です。点($\cdot$)は「その添字について足した」という印です。

右下の「200」は総和で、行和の合計とも列和の合計とも一致します($120+80=90+110=200$)。一致しなければどこかで数え間違いがあるので、検算に使えます。

3. 条件付き分布 — 「行で割る・列で割る」

ここからが2級らしい見方です。各セルの度数を何で割るかによって、表から読み取れる意味が変わります。

同時相対度数(全体で割る)

まず素直に、各セルを総数200で割ってみます。これは「ランダムに1人選んだとき、その組み合わせである確率」にあたります。

全体=200で割る 合格 不合格 行和
男性0.240.360.60
女性0.210.190.40
列和0.450.551.00

表の端(周辺)に出てきた $0.60,\,0.40$ は性別の周辺分布、$0.45,\,0.55$ は合否の周辺分布です。同時相対度数から周辺の割合がそのまま読めるのが気持ちいいところです。

行ごとの相対度数(行和で割る)= 条件付き分布

次に、各行をその行和で割ります。すると「男性のうち合格は何割か」「女性のうち合格は何割か」がわかります。これは「性別という条件を固定したときの合否の分布」、すなわち条件付き分布です。

行で割る(性別ごと) 合格 不合格
男性(120人中)0.400.601.00
女性(80人中)0.5250.4751.00

男性の合格率は $48 \div 120 = 0.40$、女性の合格率は $42 \div 80 = 0.525$。各行が合計1になっていることに注目してください。

これは「行の変数で条件付けたら、列の変数の分布になる」という意味で、確率の言葉では $P(Y \mid X)$ にあたります。

列ごとの相対度数(列和で割る)

逆に各列を列和で割ると、「合格者のうち男性は何割か」という別の問いに答えられます。

列で割る(合否ごと) 合格(90人中) 不合格(110人中)
男性0.5330.655
女性0.4670.345
1.001.00

同じ表でも、全体で割る・行で割る・列で割るの3通りで意味がまったく変わります。「男性の合格率」と「合格者の男性割合」はまったくの別物で、前者は行で割り、後者は列で割ったものです。

試験でもよく入れ替えて引っかけてくるので、「何のうちの何か?」をいつも声に出して確認してください。知りたい問いが「○○のうち△△は何割?」なら、○○の合計で割る──これが鉄則です。

4. 関連があるかどうかの見分け方

2つの質的変数に関連(連関)があるとは、ざっくり言えば一方の値を知ると、もう一方の出方が変わることです。クロス集計表では、行ごとの条件付き分布を見比べるのが基本の見方です。

行を見比べる

さきほどの条件付き分布をもう一度見ます。男性の合格率は0.40、女性は0.525でした。行によって割合のパターンが違うので、「性別と合否には関連がありそうだ」と読めます。もし関連がなければ、どの行も同じ割合のパターンになるはずです。

関連がない(独立)とはどういう状態か

関連がまったくない状態を独立といいます。独立なら、行で割っても列で割っても、条件付き分布が周辺分布と一致します。次の表は、合否の周辺割合(合格45%・不合格55%)が男女どちらでもそのまま保たれている、独立の見本です。

独立な場合(期待度数) 合格 不合格 行和
男性5466120
女性364480
列和90110200

この表では男性の合格率も女性の合格率も $54/120 = 36/80 = 0.45$ で、全体の合格率45%とぴったり同じです。各セルの度数は「行和 × 列和 ÷ 総和」で作られています。

たとえば男性・合格のマスは $120 \times 90 \div 200 = 54$。この値を期待度数と呼び、第6章の独立性の検定では「実際の度数」と「もし独立ならこうなるはずの期待度数」のズレを測ります。

FORMULA — 試験に出る式 独立を仮定したときの期待度数: $$e_{ij} = \frac{n_{i\cdot}\, n_{\cdot j}}{n}$$

実際の度数 $n_{ij}$ がこの $e_{ij}$ から大きく離れているほど、2変数の関連が強いと判断できます。「行ごとの割合がそろっていれば独立、バラついていれば関連あり」──まずはこの感覚でOKです。ズレを数字でカチッと検定するのが、第6章のカイ二乗検定です。

5. 数値例:2×3表で読む

列が3つに増えても、考え方はまったく同じです。あるサービスについて、年代(若年・中年・高年)と満足度(満足・不満)を集計した $2 \times 3$ 表で練習しましょう(縦に満足度、横に年代を取っています)。

若年 中年 高年 行和
満足605030140
不満40301080
列和1008040220

各年代の「満足率」を知りたいので、列で割ります(年代という条件を固定)。若年の満足率は $60 \div 100 = 0.60$(60%)、中年は $50 \div 80 = 0.625$(62.5%)、高年は $30 \div 40 = 0.75$(75%)です。

年代が上がるほど満足率が高い、という傾向(関連)が読み取れます。もし独立なら、どの年代も全体の満足率 $140 \div 220 \approx 0.636$ になるはずでした。高年の0.75はそこから大きく上振れしているので、年代と満足度には関連がありそうだ、と判断できます。

$r \times c$ 表になっても手順は不変です。「何のうちの何か?」を決めてから、その合計で割る──これさえ守れば、行や列がいくつに増えても関連の有無まで読み取れます。

CHECK TEST — 確認テスト

この章の理解度チェック

答えを開く前に、必ずノートに手で書いてください。書いてから答え合わせをすることで、試験本番でも同じ判断がすぐにできるようになります。

Q1クロス集計表の各セルの度数 $n_{ij}$ は、何を表す数字でしょうか?
行の条件と列の条件を両方同時にみたす件数(同時度数)です。行・列それぞれ単独の集計ではなく、組み合わせごとの件数を表します。
Q2本文の合否×性別の表(男性120人・女性80人、合格90人・不合格110人)で、男性の合格率を計算してください。何で割るべきかも答えてください。
男性の行和120で割ります。$48 \div 120 = 0.40$(40%)。「男性のうち」を知りたいので、行で割るのが正解です。
Q3「合格者のうち男性は何割か」を求めるには、行と列のどちらで割ればよいでしょうか?
列で割ります。合格者(列和90人)を基準にした割合なので、合格の列和で割る必要があります($48 \div 90 \approx 0.533$)。
Q42つの質的変数が「独立」であるとは、条件付き分布についてどういう状態でしょうか?
行で割っても列で割っても、条件付き分布が周辺分布と一致する状態です。どの行(列)を見ても割合のパターンがそろっています。
Q5期待度数 $e_{ij}$ はどんな式で求められ、何のために使われるでしょうか?
$e_{ij}=\dfrac{n_{i\cdot} n_{\cdot j}}{n}$(行和×列和÷総和)です。「もし独立だったら」の度数を表し、実際の度数とのズレの大きさから関連の強さを判断する、第6章の独立性の検定の土台になります。

次回 1-13 時系列データ① では、データを時間軸に並べた「時系列」を扱い、成長率の平均を正しく出すための幾何平均を学びます。

さえちゃん
さえ

クロス集計表は「割る向き」がすべて! 今日の表をもう一度ノートに書いて、行で割った割合と列で割った割合を自分の手で出してみてね。それができたら、第6章のカイ二乗検定はもう怖くないよ。

HANDWRITING — 紙に書いてインプットしよう!

このページに出てきた重要キーワードです。ページを閉じる前に、声に出しながら紙に手で書いてみてください。手を動かすと、読むだけの何倍も速く記憶に定着します。

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