期待値とは? – カイ2乗検定を学習する前に
データ分析において「期待値(きたいち)」という言葉は頻繁に出てきますが、なんとなく曖昧なまま覚えている方も少なくありません。
この記事で学習できること
- 期待値とは何か
- 期待値が「平均的に起こるはずの値」である理由
- 期待値の例(サイコロ・景品の割り振り計画)
特に カイ2乗検定 を理解するためには、この「期待値」の考え方が必須になります。こちらの記事では、期待値の基本イメージだけに焦点を絞って学習していきます。

期待値はむずかしく聞こえるけど、「起こりそうな平均値」と覚えるとスッキリするよ!
期待値とは?
期待値とは 「平均すると、このくらい起こるはずだよ」という値 のことです。
特徴は次の2つです。
- 理論上の平均値
- 実際の結果と必ずしも一致しない
つまり、期待値とは「その現象をとてもたくさん繰り返したら平均的にこうなるはずだ」という予測値のことを指します。
ここでは、2つの具体例で期待値の感覚をつかんでいきましょう。
サイコロで確認
まずは、最もシンプルな例から。
公平なさいころを60回振ったとき、1の目が出る期待値は?
- 振る回数(事象):60回
- 1 が出る確率:1/6
期待値は(事象×確率)で計算できます。
- 60×1/6 = 10
つまり、1の目は平均すると10回出るはずというのが期待値です。ただし、実際に1が10回ぴったり出るかどうかは別問題です。むしろ、ちょうど10回になる方が珍しいですよね。8回になることもあれば12回になることもあります。
期待値は「このくらい起こりそうだね」という理論上の基準を示しているだけなのです。

期待値は「予想のものさし」だよ! 実際のデータは上下にブレるのが普通です
サイコロの説明はありきたりなので、もう1例、商店街の抽選くじを考えてみましょう。
景品の割り振り計画にも使える「期待値」
景品の割り振り計画
- 売上予算: 100万円
- くじの販売数: 100万円 / 1,000円 = 1,000枚
- 景品予算: 20万円
1,000円のお買い物で1回分のくじ引きができますよ。100万円の売上に対して20万円分のプレゼントキャンペーンをしますよ、という企画を想定してください。
合計で20万円分の景品を用意します。くじの販売数は1,000枚です。1枚当たりはどれくらいかというと、これは暗算できますよね。
- 200,000 ÷ 1,000 = 200
これは1枚当たりのくじの平均値ですが、期待値にも相当します。
ここでは、具体的な割り振りを提案し、各等級の景品に割り当てる予算と、当選確率を計算してみましょう。
景品の価値設定と当選確率:
- 1等:3万円分の商品 x 1本
- 2等:1万円分の商品 x 3本
- 3等:5,000円分の商品 x 10本
- 4等:1,000円分の商品 x 50本
- 5等:100円分の商品 x 余剰分(当選確率を調整して期待値を合わせる)
- 参加賞:残った金額
抽選くじに来てもらえるような配分を目指していきましょう。1等から4等までの景品にかかる予算を計算し、残った予算を5等にどのように割り振るかを考えます。
- 1等:3万円分の商品 x 1本(当選確率 0.1%)
- 2等:1万円分の商品 x 3本(当選確率 0.3%)
- 3等:5,000円分の商品 x 10本(当選確率 1%)
- 4等:1,000円分の商品 x 50本(当選確率 5%)
ここまでの使用金額は16万円。残り3万2000円を5等の景品に、8,000円分を参加賞にすべて割り当てます。
- 5等:100円分の商品 x 320本(当選確率 32%)
- 参加賞:残り x 616本(残額8,000円で参加賞作成)
ポケットティッシュなら500組で4,000円前後ですから、8,000円もあれば十分616組分は楽に用意できるでしょう。
以下のExcelでまとめましたが、SUMPRODUCT関数で期待値を計算すると、ちょうど1枚当たり200円になったはずです。

SUMPRODUCT関数は、30,000×0.1%+10,000×0.3%+5,000×1.0%+1,000×5.0%+100×32.0%+13×61.6% をしています。この合計値が「200」です。
これらの設定により、期待値はちょうど200円になり、5等の当選確率が32%に設定されました。当選確率を見せてしまうと、ほとんどがポケットティッシュになりうるくじ引きでもありますが、ハズレでも景品アリ抽選会と考えれば問題ないでしょう。
冒頭にも説明した、ある事象が繰り返し発生した場合において、「平均して」どれくらい起きるかを示した数値は、このように使うこともできるわけです。
まとめ
この記事では、カイ2乗検定の前提となる期待値の概念をシンプルに整理しました。
- 期待値とは?
- 平均すると「このくらい起きるはず」という理論上の値
- サイコロの例
- 60回振れば1の目は10回が期待値。ただし実際に10回とは限らない
- 景品の割り振りへの応用
- 確率 × 値段で、景品の予算が適正か判断できる
期待値のイメージをしっかりつかんでおくことで、カイ2乗検定が「どんな考え方でデータを比較しているのか」が理解しやすくなります。

それでは次の記事よりカイ2乗検定のお話に入っていきます!
最終確認日:2025年11月23日

