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macroscope — 2026年6月12日 / 今日の経済

第4回 イラン攻撃中止で、相場がいっせいに逆回転 ― 「悪材料が消える」とき、何が巻き戻るのか

ゼロから始めた経済の学習ノート、今日で第4回です。この macroscope には、毎日ひとつずつ学んだことを書きためています。ここ数日は「中東の緊張 → 原油高 → 物価高 → 株安・ドル高」という流れを追いかけてきました。ところが今朝起きてニュースを見ると、原油は急落、米国株は急反発、ドル円は円高。きのうまでの流れが、一晩でそっくり逆向きになっていました。「悪材料が消えるとき、相場では何が起きるのか」が今日の問いです。分からない言葉は経済用語ノートに書きためています。

今日のニュース

きのう(6月11日)の夜から今朝にかけて、トランプ米大統領が予定していたイラン攻撃を中止すると表明し、その後「イランと戦闘終結で合意か」と報じられました。数日前まで「報復」「再攻撃」という言葉が飛び交っていたところからの急転換です。

市場の反応は劇的でした。まず原油(WTI)が前日比2.6%安の87.71ドルまで急落。「ホルムズ海峡からの供給が止まるかもしれない」という不安が後退したためです。米国株は主要指数がそろって急反発し、S&P500は+1.75%、ハイテク中心のナスダックは+2.54%。とくに半導体株が買われ、マイクロンは約12%高だったそうです。そしてドル円は円高方向に動き、一時159円53銭前後まで下落。今朝は159円台後半で推移しています。

項目
WTI原油(6/11)87.71ドル(−2.6%)
S&P500(6/11)7,394.30(+1.75%)
ナスダック(6/11)+2.54%(半導体が主役)
日経平均 6/11終値64,217円(+38円の小反発)
ドル円(6/12朝)159円台後半(一時159.53円)
米5月PPI市場予想より上振れ(ただし反応は限定的)

ちなみにきのうの日経平均も、振り返るとジェットコースターでした。朝方は中東リスク警戒で一時1,800円超も下げたのに、報道を受けて半導体株に買いが戻り、終値は64,217円と前日比38円高。一日のうちに谷と山を両方見た形です。

なお、きのう米国では5月のPPI(卸売物価指数=企業の間で取引されるモノの値段の動き)も発表され、市場予想より高い結果でした。おととい「CPIが予想どおりでも売られた」と書いたばかりなのに、今回は「予想より悪い数字なのに、ほぼ無視」。この対比も、今日の大事な観察ポイントです。

なぜ「全部いっせいに」動いたのか

今回の流れをひとつの連鎖で見るとこうなります。

  • トランプ大統領がイラン攻撃の中止を表明(「戦闘終結で合意か」との報道)
  • ホルムズ海峡の封鎖懸念など、原油の供給不安が後退する
  • 原油が急落(WTIは87ドル台へ)
  • 「原油高→物価高」の圧力が和らぐとの見方で、米長期金利も低下方向
  • 金利低下はハイテク株の追い風 → 米国株が急反発(半導体が主役)
  • 「有事のドル買い」が巻き戻り、ドルが売られて円高(159円台後半)

ここで気づいたのは、ここ数日の値動きの多くが「中東リスク」というひとつの前提から枝分かれしていた、ということです。原油高も、インフレ警戒も、株安も、有事のドル買いも、元をたどれば同じ根っこ。だから根っこの前提が消えた瞬間、枝分かれしていた値動きがいっせいに逆回転した。市場ではこういう動きをリスクオン(不安が和らいで、お金が安全資産から株などへ戻ること)と呼ぶそうです。

もうひとつの観察は、PPIの扱いです。第3回では「予想どおりのCPI」ですら相場を動かしたのに、今日は「予想より高いPPI」がほぼ無視されました。矛盾しているようですが、こう考えると腹落ちしました。市場はつねに、そのとき一番大きい前提から順に値段をつけ直している。きのうまでは「インフレが定着するか」が最大の前提だったのでCPIに全員が注目した。今日は「戦争が終わるか」のほうが大きいので、PPIは後回し。数字の重要度は固定ではなく、文脈で変わるのですね。

今日の指標メモ

今日の時点で私が見ている主要な指標です(数値は概算・暫定の学習メモです)。

指標直近の値ひとこと
WTI原油87.71ドル(6/11)攻撃中止の報で急落。供給不安が後退
S&P5007,394.30(+1.75%)2日続落から急反発。半導体が主役
日経平均株価64,217円(6/11終値)朝1,800円超安→38円高の乱高下
ドル円159円台後半有事のドル買いが巻き戻り円高方向
米10年債利回り4%台半ば(概算)原油急落を受け低下気味
日銀 政策金利0.75%(会合待ち)来週6/15-16に1.0%への利上げ観測

きょう6月12日は、株価指数の先物やオプションの決済が重なる「メジャーSQ」という特別な日でもあるそうで、朝方は値動きが荒れやすいとのこと。一覧ページ上部の「主要指標トラッキング」には今日も1行ずつ足していきます。点が線になると、原油の山が崩れた瞬間も、あとから見えてくるはずです。

今日の俯瞰

今日たどった流れを、一本の道にまとめると、こうなります。

  • イラン攻撃中止・戦闘終結の報 → 原油急落 → 米金利低下 → 米株急反発(半導体主導) → 有事のドル買いの巻き戻しで円高 → 週明け6/15-16の日銀会合へ

ここ数日かけて積み上がった「不安の値段」が、一晩でまとめて剥がれ落ちた一日でした。次はいよいよ週明け6月15-16日の日銀会合です。第2回で「中東が変数」と書きましたが、その変数が小さくなったいま、利上げはむしろ決めやすくなったのか。植田総裁が入院中のなか、合議の仕組みがどう答えを出すのかを追いかけます。

要点まとめ

今日いちばんの学びは、相場には「巻き戻し」があるということでした。悪材料が出たとき、相場はそれを前提にいろいろな値段を動かします。だからその悪材料が消えると、枝分かれした値動きがまとめて逆回転する。上がるのも下がるのも、同じ一本の前提につながっていたわけです。

Excel講師の寄り道をひとつ。今日の相場は、Ctrl+Z(元に戻す)を連打した画面に似ていると思いました。ここ数日の操作――原油高、金利上昇、株安、ドル高――が、まとめてアンドゥされた。ただし、ExcelのCtrl+Zで戻せるのは「操作」だけで、すでに確定した実績データまでは消えません。相場も同じで、巻き戻ったのは「これからの不安」のほうであって、CPI+4.2%という確定した実績は残ったまま。原油が下がれば来月以降の物価は楽になるかもしれませんが、いままで上がった分の物価が下がるわけではない。アンドゥできるものと、できないものを区別する――シートの操作でいつも意識していることが、経済でも効いてくるとは思いませんでした。

不安は一晩で巻き戻っても、物価と金利の宿題は残っている。それを抱えたまま、週明けの日銀会合に向かいます。明日もまた、ひとつ賢くなれますように。

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