ゼロから始めた経済の学習ノート、今日で第2回です。この macroscope には、毎日ひとつずつ学んだことを書きためています。きのうは「日銀が利上げすれば、日米の金利差が縮んで円高方向の力が働く」と書いたばかりでした。ところが今朝、ドル円はその予想とは逆の方向――160円を超える円安まで進んでいます。さっそく自分の理解が試される展開で、お恥ずかしい限りなのですが、なぜこうなったのかを追いかけてみます。分からない言葉は経済用語ノートに書きためています。
今日のニュース
きのう(6月9日)のニューヨーク市場で、ドル円は一時160円44銭まで上昇しました。160円は、政府・日銀が「為替介入(円安を止めるために国が円を買う動き)」を考えるかもしれない、と意識される節目の水準です。来週に日銀の利上げが控えているのに、円はむしろ売られて160円台を固める動きになっています。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 6/8 ドル円 | 約159円 |
| 6/9 ドル円(NY) | 一時 160.44円 |
| 6/9 S&P500(米国株) | 7,386.65(−0.26%) |
| 本日の注目 | 米5月CPI(消費者物価指数)発表 |
きっかけは大きく二つあったようです。ひとつは中東情勢で、トランプ米大統領が「イランへの報復」に触れる発言をしたことから、「有事のドル買い」と呼ばれる、危機のときに安全とされるドルへお金が逃げる動きが強まりました。もうひとつは、今夜発表される米国の5月CPIへの警戒です。物価が想定より上振れていれば、アメリカが利上げを急ぐとの見方が出て、ドルがさらに買われやすくなる――その思惑が先回りで効いている、という解説でした。
なぜ「利上げが近いのに円安」なのか
きのうの私の理屈(利上げ=円高方向)は、間違いではないけれど「片側だけ」を見ていた、というのが今日の学びでした。為替は、金利差のほかにも動かす力があって、今はそちらが勝っている、という連鎖です。
- 中東(ホルムズ海峡)の緊張が続く(原油が止まるかもしれない不安)
- 危機のときは「とりあえず安全なドルを持とう」という動きが強まる(有事のドル買い)
- 今夜の米CPIが上振れれば、米国の利上げ前倒し観測も出る
- ドルを買う力が二重に働く
- 来週の日銀利上げ(円高方向の力)を、今は上回ってしまう
- 結果、ドル円は160円を超えて円安
ここが今日いちばん腹落ちした点です。為替は「日本とアメリカ、どちらの金利が高いか」という横の引き算だけで決まるわけではないのですね。世の中が不安になると、人は利息の損得より「安全な置き場所」を優先する。その避難先として選ばれやすいのがドルなので、危機のときほどドルが買われ、円が売られる。来週の利上げという円高材料があっても、この「避難の力」が大きいうちは、円安が勝ってしまう――そういう綱引きなのだと理解しました。
ちなみに日銀側も、この中東情勢を気にしているようです。氷見野副総裁は「追加利上げにはオープンだが、中東の紛争が日本の経済や物価にどう響くか次第で、タイミングとペースを決める」という趣旨を語った、と報じられています。原油高は物価を押し上げる(利上げを後押しする)一方で、景気には重し。利上げを急ぐべきか、ここでも意見が分かれているのが生々しいところです。
今日の指標メモ
今日の時点で私が見ている主要な指標です(数値は概算・暫定の学習メモです)。
| 指標 | 直近の値 | ひとこと |
|---|---|---|
| ドル円 | 一時160.44円(6/9 NY) | 160円超え。介入が意識される節目を上抜け |
| 日経平均株価 | 64,000円台(CPI待ち) | 前夜の米株安と円安をにらみ様子見 |
| S&P500 | 7,386.65(6/9) | CPI前で小幅安。ハイテクに売り |
| 米10年債利回り | 4%台 | 高止まり。利上げ前倒し観測ならさらに上も |
| 日本10年国債利回り | 2.7%前後 | 高水準圏。日銀利上げ観測を映す |
| WTI原油 | 90ドル台(高止まり) | ホルムズ海峡の緊張で再び上昇傾向 |
| 日銀 政策金利 | 0.50%(会合待ち) | 6/15-16に利上げ観測。中東情勢が変数 |
一覧ページ上部の「主要指標トラッキング」に毎日1行ずつ足していくと、前回比と推移が自動で出ます。きのうの159円から今日の160円台へ――点が線になると、円安がじわり進んでいるのが見えてきます。
今日の俯瞰
今日たどった流れを、一本の道にまとめると、こうなります。
- 中東リスク+米CPI警戒 → 有事のドル買い → ドル高・円安(160円超え) → 来週の日銀利上げ(円高方向)と綱引き → 介入警戒も意識
きのうは「日本の利上げで円が買われる」、今日は「危機でドルが買われて円が売られる」。同じドル円でも、見る力が変わると向きが逆になる。為替は金利差という横の引き算に、「不安なときの避難先選び」という別の力が重なって決まるのだと分かりました。次はやはり今夜の米CPIと、6月15-16日の日銀会合。利上げと円安、どちらの力が勝つのかを追いかけます。
要点まとめ
今日いちばんの学びは、為替は「金利差」だけの一本足では決まらないということでした。きのうは金利差ばかり見て「利上げ=円高」と早合点しましたが、現実には「有事のドル買い」という避難の力が重なり、今はそちらが勝っている。ひとつの材料で決めつけないこと、を反省しました。
Excel講師の寄り道をひとつ。為替を1個のセルだと思うと、中身は =金利差 + リスク回避 + 物価の思惑 + … という足し算(SUM)になっているのだと思います。きのうの私は「金利差」のセルしか見ていませんでした。でも今日は「リスク回避(有事のドル買い)」のセルにドカンと大きな数字が入って、合計(=ドル円)が円安側に振れた。IF(危機=TRUE, ドルを買う, …) のような分岐がオンになった、と言ってもいいかもしれません。どれかひとつのセルだけ見ていると、合計を読み違える――数字の仕事と、まったく同じでした。
経済ニュースはバラバラに見えても、金利という川に、地政学という別の川も合流してくる。複数の流れを足し合わせて、はじめて為替という一本の大河になる。今夜のCPIで、その流れがどう変わるのか。明日もまた、ひとつ賢くなれますように。