物価とは何か

What is the Price Level?

「値段」と「物価」は違う ― 個別の値札と、社会全体の水準

スーパーでキャベツを手に取ったとき、値札に書かれているのは「今日のキャベツ1個の値段」です。天候が悪ければ高くなり、豊作なら安くなる。これはあくまで、キャベツという1つの品目の個別価格の話です。

一方、ニュースで「物価が上がっている」と言うとき、指しているのはキャベツ1個の値段ではありません。キャベツもパンも電気代も家賃も、世の中にある無数のモノやサービスの値段を全部まとめて眺めたときの、物価(社会全体としての値段の水準)の話です。

キャベツが1個だけ値上がりしても、それは「物価が上がった」とは言いません。多くの品目が、全体としてじわじわ値上がりしているとき、初めて「物価が上がっている」という言い方が成り立ちます。個別の値段と、全体の水準。この2つを区別することが、物価を考える最初の一歩です。

物価が動くと、お金の価値が動く ― 同じ1万円で買える量が変わる

お金とは何かで、1万円札の価値は「みんなが受け取ると信じている」という信用で成り立っている、という話をしました。物価は、その信用されたお金の「実際の力」を左右します。

たとえば、去年は1万円でお米が20キロ買えたのに、今年は同じ1万円で18キロしか買えなくなったとします。1万円という金額そのものは変わっていませんが、1万円で買える量が減ったのです。これが、物価が上がる=お金の価値が下がるという関係です。

逆に、物価が下がれば、同じ1万円でより多くのモノが買えるようになり、お金の価値は相対的に上がります。つまり物価とは、単なる値札の集計ではなく、私たちが持っているお金がどれだけの力を持っているかを映す鏡でもあるのです。

物価は誰が決めているのか ― 無数の値付けの積み重ね

「では、物価は誰が決めているのですか」と聞かれることがあります。答えは、特定の誰か一人が決めているわけではない、です。

スーパーの店長はキャベツの仕入れ値と売れ行きを見ながら値段を決め、電力会社は燃料費を見ながら電気代を決め、大家さんは近隣相場を見ながら家賃を決めます。日本中の無数の店や会社が、それぞれ自分の商品やサービスの値段を毎日決めている。物価とは、その無数の値付けをすべて集計した結果なのです。

1人の値付けを追いかけても、物価全体は見えません。だからこそ、総務省のような役所が、多くの品目の値段を毎月まとめて調べ、指数という形にしています。物価は肉眼で直接見える数字ではなく、統計として測って初めて姿が見える数字なのです。

もっと深く ― 物価指数はCPIだけではないDEEP DIVE

ここからは、基礎の一歩先の話です。読み飛ばしても本筋は追えます。

私たちがよく耳にするのは消費者物価指数

ニュースで「物価」というとき、多くは消費者物価指数(CPI。総務省が毎月公表する、家計が買うモノやサービスの値段の指数)を指しています。詳しくは消費者物価指数のページで扱っています。

物価を測るものさしは、実はほかにもある

企業どうしが取引するときの値段を測る企業物価指数(原材料や工業製品など、企業間で取引される商品の価格の指数)というものさしもあります。原材料の値上がりは、まずこの企業物価指数に表れ、しばらく遅れて消費者物価指数に波及することが多いと言われています。

もう1つ、名目GDPと実質GDP・経済成長率で登場した名目GDPと実質GDPの比から計算されるGDPデフレーター(経済全体を対象にした、もう1つの物価の指数)もあります。CPIが家計の買い物に絞った物価であるのに対し、GDPデフレーターは輸出入や投資まで含めた、経済全体の物価を映します。

どのものさしを使うかによって、見えてくる「物価」の姿は少しずつ違います。ニュースで物価の数字を見たときは、それがどの物価指数の話なのかを意識すると、理解がぐっと深まります。

考えてみるTHINK
Q1

「値段が上がったのに、物価は下がっている」ということはあり得るでしょうか?

ヒント: 物価は無数の品目の値段をまとめた「全体」の話でした。一部の値段だけで考えていないか、見直してみましょう。

Q2

最近、値段が変わったと感じたものを3つ挙げ、それぞれなぜ変わったのか推測してみましょう。

ヒント: 「物価は誰が決めているのか」で見た、値付けをしている側の事情を思い浮かべてみましょう。

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