ルーティングテーブルに、同じ宛先に届きそうなルートが複数あったら、ルーターはどれを選ぶのでしょうか?
たとえば「192.168.1.0/24」への経路と「192.168.1.0/25」への経路の両方が登録されていたら? あるいはスタティックルートとOSPFが同じネットワークを指していたら? 優先順位のルールを想像してみてください。
住所は「より詳しい方」が優先される
前回、ルーターは宛先IPアドレスとルーティングテーブルを照合して転送先を決めると学びました。しかし実際のネットワークでは、一つの宛先に対して複数のルートが候補になることがよくあります。この「どれを選ぶか」には、明確な優先順位のルールがあります。
宅配便を思い浮かべてください。「東京都」宛ての荷物と「東京都渋谷区」宛ての荷物、どちらがより正確に届けられるでしょうか。当然、より詳しい住所の方が正確です。ルーティングでもこれと同じ考え方が使われます。
第一の判断基準:最長一致(ロンゲストマッチ)
複数のルートが同じ宛先IPアドレスを含んでいる場合、ルーターはプレフィックス長が最も長い(=最も範囲が狭く、より詳しい)ルートを優先します。これを最長一致(ロンゲストマッチ)と呼びます。
たとえば宛先が 192.168.1.5 で、ルーティングテーブルに次の2つのルートがあったとします。
192.168.0.0/16経由でインターフェースA192.168.1.0/24経由でインターフェースB
どちらも192.168.1.5を含んでいますが、/24 の方が /16 より範囲が狭く、より詳しい情報です。この場合、ルーターは必ず /24 のルート(インターフェースB)を選びます。これはAD値やメトリックよりも先に判断される、最優先のルールです。
第二の判断基準:アドミニストレーティブディスタンス(AD)
プレフィックス長が同じルートが複数の情報源(スタティック、OSPF、EIGRPなど)から届いた場合に使われるのがアドミニストレーティブディスタンス(AD)です。ADは「その情報源をどれだけ信頼するか」を表す数値で、値が小さいほど信頼度が高く優先されます。
CCNAで覚えておくべき代表的なAD値は次の通りです。
| 情報源 | AD値 |
|---|---|
| 直接接続(Connected) | 0 |
| スタティックルート(Static) | 1 |
| EIGRP(内部) | 90 |
| OSPF | 110 |
| RIP | 120 |
| 未知(到達不能) | 255 |
直接接続が0で最も信頼され、次にスタティックルートの1、そしてOSPFの110というように、数字が小さいほど「信頼できる情報源」として優先されます。
第三の判断基準:メトリック
プレフィックス長もADも同じ場合(つまり同じルーティングプロトコル内で複数の経路がある場合)に使われるのがメトリックです。メトリックはプロトコルごとに計算方法が異なり、OSPFではコスト、EIGRPでは帯域幅や遅延を元にした複合値が使われます。メトリックが最も小さい経路が選ばれます。
判断の順序をまとめると
ルーターがルートを選ぶ優先順位は、次の3段階です。
- 最長一致(プレフィックス長が最も長いものを優先)
- アドミニストレーティブディスタンス(値が小さいものを優先)
- メトリック(値が小さいものを優先)
この順序は絶対に逆にならないことがポイントです。たとえADが1(スタティック)のルートがあっても、プレフィックス長がより長いAD110(OSPF)のルートがあれば、最長一致が優先されるため後者が選ばれます。
ルーティングテーブルに 10.0.0.0/8(AD 110、OSPF)と 10.0.0.0/24(AD 1、スタティック)の両方があり、宛先IPが 10.0.0.5 でした。どちらのルートが使われますか?
答えを見る
答えは 10.0.0.0/24(スタティック、AD 1) です。一見AD値だけを見るとOSPFの方が信頼度は低そう(値が大きい)と思うかもしれませんが、ここでは最長一致が最優先されます。/24 の方がプレフィックス長が長い(より詳しい住所)ため、AD値に関係なくこちらが選ばれます。ADはあくまで「プレフィックス長が同じ場合」の次の判断基準です。
まとめると「詳しさ→信頼度→距離」の順で選ぶ
ルートの優先順位は、最長一致 → アドミニストレーティブディスタンス → メトリックの順に判断されます。特に最長一致が最優先というルールは、AD値の暗記だけに気を取られていると見落としがちなので注意してください。
アドミニストレーティブディスタンス(AD)について正しい説明はどれでしょう。「値が大きいほど信頼できる」「値が小さいほど信頼できる」のどちらですか?
答えを見る
答えは値が小さいほど信頼できるです。直接接続が0、スタティックルートが1、OSPFが110というように、数値が小さい情報源ほど優先して採用されます。
試験でのポイント
CCNA試験では、AD値の暗記(直接接続0、スタティック1、OSPF110、EIGRP内部90など)に加えて、「最長一致がAD値より優先される」という判断順序を問う問題がよく出ます。数値だけを丸暗記していると、最長一致のひっかけ問題で間違えやすいので、必ず「最長一致 → AD → メトリック」の順序ごとセットで覚えましょう。
ルート選択の優先順位は、最長一致→AD→メトリックの順。特に最長一致が一番強いというのを忘れないでね。次は、実際にルーターへスタティックルートを設定するコマンドを見ていくよ。