1つのネットワークに机が10台入る部屋があるとして、部屋の「入口の住所」と「一斉放送用の呼びかけ」に、机は使えるでしょうか?
部屋そのものを指す住所と、部屋全員に呼びかけるための特別な合図は、個人の机とは役割が違いますよね。IPアドレスにも、これと同じ「特別な2つ」があります。
ネットワークの中には「配れないアドレス」が2つある
あるネットワークのアドレス範囲には、機器(ホスト)に自由に割り当てられるアドレスだけでなく、ネットワークアドレスとブロードキャストアドレスという、特別な役目を持つ2つのアドレスが必ず含まれています。マンションで例えるなら、ネットワークアドレスは「マンション全体の住所そのもの」、ブロードキャストアドレスは「全戸に一斉放送するための呼び出し番号」です。どちらも、特定の1部屋(1台の機器)を指す住所としては使えません。
ネットワークアドレス:ホスト部がすべて0
ネットワークアドレスは、ホスト部のビットをすべて0にしたアドレスです。たとえば 192.168.1.0/24 なら、ホスト部(下位8ビット)が全部0の 192.168.1.0 がネットワークアドレスにあたります。これは「このネットワークそのもの」を指す住所で、ルーティングテーブルなどに登場しますが、機器のIPアドレスとしては使えません。
ブロードキャストアドレス:ホスト部がすべて1
ブロードキャストアドレスは、ホスト部のビットをすべて1にしたアドレスです。192.168.1.0/24 であれば 192.168.1.255 がこれにあたります。このアドレス宛てに送られたデータは、そのネットワーク内の全機器に届きます。マンションの「全戸一斉放送」と同じで、特定の1戸(1台)に向けたものではないため、こちらも機器には割り当てられません。
有効ホスト数 = 2^h − 2
ホスト部のビット数を h とすると、そのネットワークで表現できるアドレスの総数は 2^h 個です。しかし、そのうち先頭(ネットワークアドレス)と末尾(ブロードキャストアドレス)の2つは機器に使えないため、実際に機器へ割り当てられる有効ホスト数は次の式になります。
有効ホスト数 = 2^h − 2
/24(ホスト部8ビット)なら 2^8 − 2 = 254台。/28(ホスト部4ビット)なら 2^4 − 2 = 14台です。範囲でいうと、192.168.1.0/24 の有効ホスト範囲は 192.168.1.1 〜 192.168.1.254 になります。
例外:/31と/30の扱い
ルーター同士を1本の回線でつなぐポイントツーポイント回線では、ホストが2台しかいないため、伝統的には /30(有効ホスト2台、2^2−2=2)がよく使われます。さらにアドレスを節約する目的で、RFC3021により /31 を2台の直接接続リンクに使うことも認められています。/31 はホスト部が1ビットしかなく通常なら 2^1−2=0 台になってしまいますが、この特殊なケースではネットワークアドレス・ブロードキャストアドレスという概念自体を適用せず、2つのアドレスを両方ともホストとして使います。試験では「原則は2^h−2、ただし/31は例外」と覚えておくと安心です。
172.16.5.0/24 のネットワークアドレスとブロードキャストアドレス、それぞれ何になるでしょう?
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ネットワークアドレスは 172.16.5.0(ホスト部が全部0)、ブロードキャストアドレスは 172.16.5.255(ホスト部が全部1)です。有効ホスト範囲は 172.16.5.1 〜 172.16.5.254 の254台になります。
試験でのポイント
CCNA試験では「あるIPアドレスと プレフィックス長 が与えられ、ネットワークアドレス・ブロードキャストアドレス・有効ホスト範囲を答えさせる」問題が頻出です。引っかけとして、ネットワークアドレスやブロードキャストアドレスそのものを「使ってよいホストアドレス」として選ばせようとする選択肢が混ざることがあります。「ホスト部が全0=ネットワークアドレス」「全1=ブロードキャストアドレス」「どちらも機器には割り当てられない」という原則を、瞬時に判断できるようにしておきましょう。また /31 は例外的に2台ともホストとして使える点も、まれに問われます。
10.0.0.16/28 の有効ホスト範囲はどこからどこまででしょう?
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/28 はホスト部4ビットなので、ブロックサイズは16。ネットワークアドレスは 10.0.0.16、次のネットワークアドレスは 10.0.0.32 なので、ブロードキャストアドレスはその1つ手前の 10.0.0.31 です。したがって有効ホスト範囲は 10.0.0.17 〜 10.0.0.30(14台)になります。
ネットワークアドレスとブロードキャストアドレスは、部屋自体の住所と一斉放送用の番号——どっちも「個人の机」には使えないんだったね。有効ホスト数は2^h−2で計算するのがポイント。次はいよいよ「なぜサブネットに分けるのか」、分割する理由をじっくり見ていくよ。