ラベルレス飲料と、「体験」で味わうということ

ラベルレス飲料と、「体験」で味わうということ

商品情報のラベルがないペットボトル飲料の、ばら売りが解禁されました。

これまでラベルレスは箱売り限定でしたが、規制が緩み、コカ・コーラはラベルレスの「い・ろ・は・す」を10月から全国70万台超の自販機で展開するそうです。ナフサ不足への対応としても、プラスチック削減という環境対策としても、まっとうな話ですよね。

ただこのニュースを読んで、自分がまず考えたのは環境のことではありませんでした。「ラベルがないと、私たちはその商品をちゃんと"味わえる"のだろうか?」ということでした。

私はお酒が好きなので、ビールで考えてみます。

  • サッポロ黒ラベル
  • キリン一番搾り
  • アサヒスーパードライ
  • ザ・プレミアム・モルツ
  • エビスビール

代表的なところを挙げてみました。

飲食店で出てくるビールは、たいていジョッキにメーカーのロゴが入っています。あのロゴがあるから、私たちは「これは黒ラベルだ」と信じて飲んでいる。もしロゴがなく、文字だけのそっけないパッケージだったら、同じようにおいしく感じられるでしょうか?

正直に書くと、自信がありませんw

スーパードライを頼んで、キリン一番搾りが出てきたとしても、気づける自信がありません。この中で目隠しをして100%当てられるのは、ザ・プレミアム・モルツだけかもしれません(いつかやってみたい)。

たぶん私は、デザイン → ビールの味、という順番で味を受け取っているのでしょう。

おさしみだってそうですよね。目を閉じてしまえば、カンパチもヒラメもマグロもカツオも、本当に区別がつかないと思います。わかるのは、ヒラメのえんがわぐらいでしょうか?

私たちは目で見たもので「これはマグロだ」と認識して、そうだと思い込んで食べているはずです。考えてみると不思議な話で、味覚そのものより先に、見た目が「これは何か」を決めてしまっているのです。

これを地でいったのがカルビーでした。ナフサ不足で白黒パッケージのポテトチップスを出したとき、最初こそ話題になって売れたものの、リピートには繋がらなかったそうです。

確かに自分もそうでした。コンビニに立ち寄って白黒パッケージを見ると「今日もあるね」と思うだけ、ポテチ食べたいなぁ、という気分はいまのところ1ミリも感じていません(週末に食べたくなるんですけれどもね)。

だからでしょうか、カルビーは「原材料の調達見通しがついた」として、8月からは表側だけカラーに戻すと発表しました。「おぼっちゃまくん」のびんぼっちゃまスタイルよろしく、白黒が残るのは裏面だけです。

表の「顔」は、やっぱり手放せなかったのでしょう。

私にも身に覚えがあります。水はAmazonで買うと、ラベルレスのほうがお得です。

ところが、いざ家で飲んでみると、どうにも満足感がない。ラベルのある「い・ろ・は・す」なら「い・ろ・は・すを飲んでいるんだ」という気分になれるのに、それが削がれてしまうのです。

面白いのは、家の浄水器で水を入れ直して翌日に飲んでも、満足度はまったく変わらないということ。つまり中身の問題ではないのです。ラベルが剥がれた瞬間、それはただの容器に入った水になる。

その意味で、コカ・コーラが自販機からラベルレスを始めるのは、理にかなっています。

  • 買うときには、ラベルありの見本を見て選ぶ
  • 出てくるのはラベルなしのボトル
  • でも「ラベルを見て買った」という記憶と満足感が、先に手に入っている

体験を購入時に済ませてしまえば、出てくるモノからラベルを剥いでも影響は少ない。ここが肝だと思います。

ポテトチップスも同じ理屈で、色付きの袋を見て選び、レジでラベルレスの袋と交換する(ゲーム機を買うときの空箱のような感じ)にすれば、成立するかもしれません。オペレーションは増えてしまいますけどね。

薬もそうだと聞いたことがあります。有効成分は本当はごくわずかしか要らないのに、「飲んだ」という体験を与えるために、わざわざ錠剤の形にしているのだ、と。

そう考えると、ラベルレスの本質的な課題は、環境対策とブランド訴求の板挟み、という以上に、「体験をどうやって残すか」なのだと思います。

ラベルという物理的なモノを剥がしても、体験さえうまく残せれば、ラベルありと同じ満足を生み出せる。もしその方法が見つかれば、味わいを損なわずにエコも実現できるはずです。

では、どうするか? ニュースに感心して終わりでは、思考トレーニングになりませんので、「体験をどうやって脳に残すか」の案を、自分でも考えてみました。

ひとりブレインストーミングをしてみましょう。

① 全部をラベルレスにするのではなく、100本に1本くらいの確率でラベル入りの「あたり」が出るようにする。ゲーム性で体験を作る案です。

② アプリ決済のみにする。アプリの画面上にはラベルがあり、出てくるのはすべて共通のボトル。「アプリで選んだ」という体験を作ります。

③ いっそのこと、1台1商品に絞る。お茶ならお茶だけの自販機、水なら水だけの自販機。選択肢を減らして、自販機そのものにパッケージの役割をさせる案です。

④ ドリンクバーのような自販機にする。掃除は大変でしょうが、自分でボタンを押して注ぐという行為には、パッケージの代わりになる作用がありそうです。

⑤ ラベルレスにする代わりに、普段飲むペットボトル専用のパッケージを販売する。保温・保冷カバーのようなものですね。

⑥ 各社で足並みをそろえて、業界全体でラベルレスをデファクトスタンダードにしてしまう。「時代の変化」として、体験ごと上書きする案です。

考えてみれば、パッケージ代を削減できるのなら、その分を値段に還元できたりはしないものでしょうかね。

100円だった自販機の飲み物が、110円になり、120円になり、130円になり……。昔は「ゴルフ場の自販機はくそ高い!」と思ったものですが、いまや街の自販機が、どこもかしこもゴルフ場価格のようなものですからね。

10月になったら、ラベルレスの自販機を実際に体験してみるつもりです。選んだ商品と違う見た目のものが出てくるわけですが、果たして満足度はいかに…。

  • #ラベルレス
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  • #思考トレーニング