グラフによるデータの要約
前回は質的変数の要約として、棒グラフ・円グラフ・帯グラフを学びました。今回はそれらを軽くおさらいしつつ、新たに折れ線グラフ、そして本ページの主役である幹葉図(みきはず)とレーダーチャートを整理します。
幹葉図は、受講生がはじめて見ると戸惑いやすい独特の表現方法です。仕組みをしっかり理解できるよう、3問の練習問題もあわせて用意しました。読み解けるようになると、検定の問題も実務での使いみちも、ぐっと身近になります。
1. 基本的なグラフのおさらい
グラフはデータを「見える形にする」ための代表的な道具です。種類によって得意分野が異なるので、何を伝えたいかに応じて選び分けます。まずは4種類を整理しましょう。
棒グラフ ─ カテゴリ別の数を比べる
もっともシンプルで、もっとも頻繁に使われるのが棒グラフです。横軸にカテゴリ、縦軸に度数(数)をとり、棒の長さで大小を比較します。質的変数の集計と、もっとも相性のよいグラフです。
- 商品カテゴリ別の売上比較
- 都道府県別の人口
- 支店別の月間契約数
折れ線グラフ ─ 時間の流れを追う
折れ線グラフは、横軸に時間(または順序)、縦軸に値をとり、各点を線で結ぶグラフです。時系列データの可視化にもっとも適しています。線の傾きから「上昇しているのか、下降しているのか、横ばいなのか」が直感的に伝わります。
棒グラフと違って棒どうしを離さず、点を線で結ぶのは、連続的な変化を強調するためです。月の売上、株価の推移、気温の変化など、「時間とともに変わるもの」を見るとき、折れ線グラフが第一選択になります。
- 月別の売上推移
- 日経平均株価の日次推移
- 東京の月別平均気温
円グラフ・帯グラフ ─ 全体に対する割合
円グラフは全体を100%とした円を、各カテゴリの相対度数に応じて扇形に分割します。帯グラフは長方形の帯を100%として区切ります。両者とも、全体に対する各カテゴリの比率を見せるのが目的です。
帯グラフは、複数のグループを並べて比較できるのが強みです。たとえば「2024年の売上構成比 vs 2025年の売上構成比」のように、構成比の変化を視覚的に追えます。
まず「数を比べたい」のか「割合を見たい」のか「時間の流れを追いたい」のかを決める。それから棒・円帯・折れ線を選ぶ。グラフ選びに迷ったら、この順で考えてください。
4種類のグラフ、それぞれ「得意分野」があるんだよ。何を見せたいかを先に決めてから、それに合うグラフを選ぶ。これだけで資料の伝わり方がガラッと変わるよ!
2. 幹葉図(みきはず)─ 数値そのものを残すグラフ
幹葉図(かんようず、みきはず)は、量的変数を可視化する独特な方法です。英語ではstem-and-leaf plotと呼びます。「幹」と「葉」という名前のとおり、樹木をイメージするとわかりやすくなります。
もっとも大きな特徴は、元のデータの数字をそのまま残しながら、分布の形も同時に見せられること。ヒストグラム(次回扱います)と似た役割を持ちますが、ヒストグラムでは見えない「個々の値」が、幹葉図では一目で読み取れます。
つくり方の基本
たとえば、ある10人の数学のテスト点数があったとします。
62, 75, 88, 71, 55, 89, 73, 67, 82, 78
これを幹葉図にしてみましょう。各数字を「十の位(幹)」と「一の位(葉)」に分けます。たとえば「62」は、幹が「6」、葉が「2」となります。
同じ幹(十の位)を持つ数字をまとめて、葉だけを横に並べていきます。
幹 | 葉 ---+---------- 5 | 5 6 | 2 7 7 | 1 3 5 8 8 | 2 8 9
たとえば幹が「7」の行は「1 3 5 8」となっていますが、これは71点・73点・75点・78点が含まれていることを表しています。葉のひとつひとつが、ひとりのデータです。
幹葉図の3つの読みポイント
- 葉の総数 = データの個数。全部で10個の葉があるので、データは10個(10人分)
- 葉の数が多い行 = 度数が多い区間。上の例では70点台に4人で、もっとも多い
- もとのデータがそのまま再現できる。並んでいる葉から、すべての値が読み取れる
幹葉図は「ヒストグラム」+「元の値の一覧」を一枚にまとめたものです。データ数が多くないとき(おおむね30〜50個まで)に、もっとも力を発揮します。
幹(みき)が大きい桁、葉が小さい桁。木をイメージしてね。横に倒したヒストグラムだと思って眺めると、分布の形が見えてくるよ!
3. 練習問題 ― 幹葉図を読み解く
ここからは、ひとつの幹葉図を見ながら、3つの問題に答えてみましょう。すべて同じデータ(あるクラス15人の数学のテスト点数)が題材です。
幹 | 葉 ---+---------- 3 | 8 4 | 2 9 5 | 3 7 8 6 | 4 6 7 | 0 5 6 8 | 1 3 5 9 | 2
この幹葉図には、何人分のデータが含まれているでしょうか?
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すべての葉の数を数えます。
1 + 2 + 3 + 2 + 3 + 3 + 1 = 15個(15人分)
葉のひとつひとつがひとりのデータを表しているので、葉の総数がそのままデータの個数になります。これが幹葉図を読むときの一番基本的な操作です。
このクラスの最高点と最低点は、それぞれ何点でしょうか?
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最低点:38点(幹「3」の葉「8」)
最高点:92点(幹「9」の葉「2」)
幹葉図は通常、幹が小さいほうから順番に上から並んでいます。なので、一番上の行のいちばん左の葉が最小値、一番下の行のいちばん右の葉が最大値になります。値の範囲(最大−最小)は92−38 = 54点となります。
60点以上80点未満の人は、何人いるでしょうか?
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60点以上80点未満は、60点台と70点台の人の合計です。
60点台(幹「6」):4, 6 → 2人(64点、66点)
70点台(幹「7」):0, 5, 6 → 3人(70点、75点、76点)
合計:2 + 3 = 5人
このように「○点以上△点未満」という条件で人数を数えるのは、検定でよく問われるパターンです。幹の行ごとに区切れるのが幹葉図の便利なところです。
3問とも解けたかな?幹葉図は最初こそ独特に見えるけど、慣れちゃえばヒストグラムより便利な場面も多いんだよ。
4. レーダーチャート ─ 複数の指標をひと目で
最後に紹介するのはレーダーチャートです。スパイダーチャート(クモの巣のグラフ)とも呼ばれます。中心から放射状に複数の軸を伸ばし、各軸上に値をプロットして線で結ぶことで、多角形の形を作ります。
使いどころ
レーダーチャートは、複数の指標のバランスを見たいときに力を発揮します。多角形の「形」が、対象の特徴をひと目で表してくれるからです。
- 5教科の成績バランス(国語・数学・英語・理科・社会)
- 商品の評価項目(価格・品質・デザイン・使いやすさ・サポート)
- 選手の能力値(スピード・パワー・テクニック・スタミナ・知性)
注意点
便利なグラフですが、いくつか気をつけておきたい点があります。
- 軸が3個以下だと意味が薄く、10個以上だと読みづらくなる。5〜8個が見やすい目安
- 軸の並び順で多角形の形が変わるため、意味のある順番で配置する
- 各軸のスケール(最小〜最大)を統一すること。単位が異なる場合は正規化(0〜1や0〜100に揃える)が必要
- 複数のグループを重ねて比較するときは、線や塗りの色を変えてわかりやすくする
レーダーチャートの強みは「形でバランスを伝える」こと。きれいな多角形はバランスが取れていて、いびつな形は何かが突出している、という直感的な読み方ができます。
軸の順番を変えると見た目が変わっちゃうから、意味のある並びにするのがコツ!似た項目を隣に置くと読みやすいよ。
まとめ
今回登場したグラフの使いどころを、もういちど整理しておきましょう。
- 棒グラフ:カテゴリ別の数を比較する
- 折れ線グラフ:時間とともに変わる値を見る
- 円グラフ・帯グラフ:全体に対する割合を見る
- 幹葉図:少なめの量的データを元の値ごと残しながら分布を見る
- レーダーチャート:複数指標のバランスを形でとらえる
グラフ選びは「何を伝えたいか」から始めます。データを見る前にメッセージを決め、それに合うグラフを選ぶ。この順番を意識するだけで、伝わるグラフがつくれるようになります。次回は、こうしたグラフを描くときに気をつけたい工夫と落とし穴を整理します。
グラフによるデータの要約 確認シート
本ページで紹介した5種類のグラフを、サンプルデータをもとに実際にExcelで作成できる練習ファイルです。