第2章 2-4 / 確率と確率分布

確率変数と確率分布 — 離散・連続と分布関数

さえちゃん
さえ

3級でも確率変数は習ったよね。2級では「離散」と「連続」をきっちり区別するのがポイント! とくに連続だと「面積=確率」っていう新しい見方が出てくるよ。ここを押さえると、このあとの期待値・分散がぜんぶスッキリ計算できるようになるんだ。

1. 確率変数とは

確率変数とは、ひとことで言うと「とる値が確率的に決まる変数」です。たとえばサイコロを1回振ったときの出目を $X$ とすれば、$X$ は $1$ から $6$ のどれかを確率 $\tfrac{1}{6}$ ずつでとります。

実際に振る前は値が定まらず、振ってはじめて $X=4$ のように具体的な値が現れます。

確率変数そのものは大文字 $X$(エックス)で、振った結果として現れた具体的な値(実現値)は小文字 $x$ で書く、というのが約束です。この大文字・小文字の使い分けは2級を通じてずっと続くので、ここで慣れておきましょう。

とりうる値を順番に並べて区別したいときは、$x_1, x_2, \dots$(エックス・ワン、エックス・ツー)のように右下に番号を付けます。$i$ 番目の値なら $x_i$(エックス・アイ)です。

POINT

確率変数には2つのタイプがあります。とびとびの値しかとらない離散型(サイコロの出目、コインの表の枚数、不良品の個数など)と、ある区間の値を連続的にとりうる連続型(身長、待ち時間、測定誤差など)です。どちらの型かで、確率の表し方がガラッと変わります。

2. 離散型:確率質量関数(pmf)

離散型の確率変数では、「各値をとる確率」をそのまま並べれば分布が決まります。$X$ が値 $x_i$ をとる確率を

FORMULA

$$p(x_i) = P(X = x_i)$$ と書き、これを確率質量関数(probability mass function, pmf)と呼びます。「それぞれの値にどれだけの確率の重さ(mass)が乗っているか」を表す関数、というイメージです。

読み方:左辺は「ピー・エックス・アイ」、右辺は「確率変数 $X$ が値 $x_i$ をとる確率」。大文字の $P(\ )$ は「〜となる確率」を表す記号で、小文字の $p(\ )$ はその確率を値ごとに並べた関数です。

pmf は、確率である以上は次の2つの性質を満たさなければなりません。これは離散型の確率分布の大原則です。

FORMULA

$$p(x_i) \ge 0, \qquad \sum_{i=1}^{n} p(x_i) = 1$$ 各確率は $0$ 以上で、すべての値について足し合わせるとちょうど $1$。確率の重さを全部集めると $1$ になる、というのは直感どおりですね。

読み方:$\sum$ は「シグマ」。下の $i=1$ から上の $n$ まで $i$ を動かしながら、右側の $p(x_i)$ を足していく、という合図です。「シグマ・アイ・イコール・ワンから・エヌまでの・ピー・エックス・アイ」と読みます。

たとえば公平なサイコロなら、$X=1,2,\dots,6$ のそれぞれに確率 $\tfrac{1}{6}$ が乗っています。表にするとこうです。

$x$123456合計
$p(x)$1/61/61/61/61/61/61

確率がすべて等しいので、棒グラフは同じ高さの棒が6本並んだ形になります(次の図の左側)。離散型は「棒の高さがそのまま確率」と覚えておけば十分です。

3. 連続型:確率密度関数(pdf)

連続型では事情が変わります。たとえば「待ち時間がちょうど $3.0000\dots$ 分」のような一点をぴったり当てる確率は $0$ になってしまうのです。

とりうる値が無限に連続しているので、ひとつの点に確率の重さを乗せられない、と考えてください。そこで連続型では、確率を点ではなく区間(面積)で測ります。

FORMULA

連続型の確率変数 $X$ に対し、確率密度関数(probability density function, pdf)$f(x)$ を使って、$X$ が区間 $[a,b]$ に入る確率を次のように表します。 $$P(a \le X \le b) = \int_{a}^{b} f(x)\, dx$$ つまり、密度曲線 $f(x)$ と $x$ 軸ではさまれた面積が確率になります。

読み方:左辺は「$X$ が $a$ 以上 $b$ 以下となる確率」。右辺の $\int$ は「インテグラル」で、下の $a$ から上の $b$ まで $f(x)$(エフ・エックス)を $x$ で積分する、と読みます。末尾の $dx$(ディー・エックス)は「$x$ について積分する」という目印で、それ自体に値はありません。

ここで大事なのは、$f(x)$ そのものは確率ではない、という点です。$f(x)$ は「その付近にどれくらい確率が密集しているか(密度)」を表す高さであって、$1$ を超えることもあります。確率になるのは、あくまで $f(x)$ を区間で積分した面積のほうです。

FORMULA

pdf も、pmf と対応する2つの性質を満たします。 $$f(x) \ge 0, \qquad \int_{-\infty}^{\infty} f(x)\, dx = 1$$ 密度は負にならず、全範囲で積分すると面積はちょうど $1$。離散の $\sum p(x_i)=1$ が、連続では「全体の面積 $=1$」に対応しているわけです。

読み方:$\infty$ は「無限大」、$-\infty$ は「マイナス無限大」。$\int_{-\infty}^{\infty}$ は「マイナス無限大から無限大まで」、つまり数直線の全範囲にわたって積分する、という意味です。

POINT

連続型では、一点の確率は $0$ です($P(X=a)=0$)。そのため $P(a\le X\le b)$ と $P(a < X < b)$ は等しくなります。等号がついていてもいなくても面積は同じ。ここは2級でよく問われる、連続型ならではの感覚です。

4. 離散と連続を並べて見る

ここまでの離散型(棒の高さ=確率)と連続型(面積=確率)を、図で並べて比べてみましょう。

離散型:高さ=確率 1 2 3 4 5 x 連続型:面積=確率 a b P(a≤X≤b) f(x) x

左:離散型は棒の高さがそのまま確率。右:連続型は密度曲線の下の面積が確率(塗った部分が $P(a\le X\le b)$)

左右を見比べると、棒の「高さの合計」が $1$ になるのが離散、曲線の下の「面積の合計」が $1$ になるのが連続、という対応がつかめます。次の表に違いをまとめておきます。

観点離散型連続型
値のとり方とびとび(可算)区間内を連続的
確率の関数確率質量関数 pmf $\ p(x)$確率密度関数 pdf $\ f(x)$
確率の正体高さ $p(x)=P(X=x)$面積 $\int f(x)\,dx$
一点の確率$P(X=x)\ge 0$ になりうる$P(X=x)=0$
合計=1$\displaystyle\sum_{i=1}^{n} p(x_i)=1$$\displaystyle\int_{-\infty}^{\infty} f(x)\,dx=1$
期待値(次回)$\displaystyle\sum_{i=1}^{n} x_i\,p(x_i)$$\displaystyle\int_{-\infty}^{\infty} x\,f(x)\,dx$

$\sum$ が $\int$ に、$p(x_i)$ が $f(x)\,dx$ に置き換わっただけ、と眺めると両者は地続きです。この対応関係が見えていれば、2-5a で出てくる期待値の式も「離散と連続でほぼ同じ」とすぐ納得できます。

5. 累積分布関数 $F(x)$

離散と連続でバラバラだった確率の表し方を、一本化して扱える便利な関数があります。それが累積分布関数(cumulative distribution function, cdf)です。「$X$ が $x$ 以下になる確率」を、$x$ の関数として並べたものです。

FORMULA

$$F(x) = P(X \le x)$$ 離散型なら $x$ 以下の確率を足し集め、連続型なら $-\infty$ から $x$ まで面積を積分します。 $$F(x) = \sum_{x_i \le x} p(x_i), \qquad F(x) = \int_{-\infty}^{x} f(t)\, dt$$

読み方:$F(x)$ は「大文字のエフ・エックス」で、「$X$ が $x$ 以下となる確率」。密度の小文字 $f$ と区別してください。左の $\sum_{x_i \le x}$ は「$x$ 以下の $x_i$ について足す」。右の積分では、上端の $x$ と中身の文字がかぶらないように、中身を仮の文字 $t$(ティー)に置き換えています。$f(t)\,dt$ は「エフ・ティー・ディー・ティー」です。

累積分布関数 $F(x)$ には、型によらず共通する性質があります。確率を左から足していくのですから、$F$ は右にいくほど増える(減らない)関数で、いちばん左では $0$、いちばん右では $1$ に達します。

POINT

$F(x)$ の性質は3つ。(1) 値はつねに $0 \le F(x) \le 1$。(2) 単調に増加する(減らない)。(3) 両端では $$\lim_{x\to-\infty}F(x)=0, \qquad \lim_{x\to\infty}F(x)=1$$ $\lim$ は「リミット」で、「$x$ をマイナス無限大に近づけたときの $F(x)$ の極限」と読みます。離散型では確率が乗っている値のところで $F$ が段差状に「ジャンプ」し、連続型ではなめらかな曲線になります。

$F(x)$ が手元にあれば、区間の確率もすぐ出せます。たとえば $P(a < X \le b) = F(b) - F(a)$。引き算ひとつで区間確率が求まるので、計算がとてもラクになります。

EXAMPLE(サイコロの cdf)

公平なサイコロの出目 $X$ について、$F(x)=P(X\le x)$ を考えます。たとえば「$3$ 以下が出る確率」は

$$ \begin{aligned} F(3) &= P(X\le 3) = p(1)+p(2)+p(3)\\[2pt] &= \frac{1}{6}+\frac{1}{6}+\frac{1}{6} = \frac{3}{6} = \frac{1}{2} \end{aligned} $$

では「$X$ が $3$ より大きく $5$ 以下」の確率は? $F$ の引き算で、

$$ \begin{aligned} P(3 < X \le 5) &= F(5) - F(3)\\[2pt] &= \frac{5}{6} - \frac{3}{6} = \frac{2}{6} = \frac{1}{3} \end{aligned} $$

これは「$4$ または $5$ が出る確率」と一致しますね。$F$ をいったん用意すれば、区間確率は差で取り出せる、というのが累積分布関数の便利さです。

6. 記号の読み方まとめ

このページで出てきた記号を一覧にしておきます。講座で読み上げるときや、あとで見返すときの早見表として使ってください。

記号読み方意味
$X$ / $x$エックス(大文字/小文字)確率変数そのもの / 実際に現れた値(実現値)
$x_i$エックス・アイとりうる値の $i$ 番目
$P(X{=}x_i)$ピー・エックス・イコール・エックス・アイ$X$ が値 $x_i$ をとる確率
$p(x)$ピー・エックス(小文字)確率質量関数 pmf。離散型で、各値の確率
$f(x)$エフ・エックス(小文字)確率密度関数 pdf。連続型で、曲線の高さ(確率ではない)
$F(x)$エフ・エックス(大文字)累積分布関数 cdf。$X$ が $x$ 以下となる確率
$\displaystyle\sum_{i=1}^{n}$シグマ、$i$ は 1 から $n$ まで$i$ を動かしながら足し合わせる
$\displaystyle\int_{a}^{b} \cdots\, dx$インテグラル、$a$ から $b$ まで、ディー・エックス$x$ について $a$ から $b$ まで積分する(面積を求める)
$\infty$ / $-\infty$無限大 / マイナス無限大数直線の右端 / 左端(どこまでも)
$[a,\,b]$閉区間 $a$ から $b$$a$ 以上 $b$ 以下の範囲(両端を含む)
$a{\le}X{\le}b$$X$ は $a$ 以上 $b$ 以下$<$ なら「未満」「より大きい」。連続型では等号の有無で確率は変わらない
$\displaystyle\lim_{x\to\infty}$リミット、$x$ を無限大に近づける$x$ を限りなく大きくしたときの値(極限)
CHECK TEST — 確認テスト

この章の理解度チェック

答えを開く前に、必ずノートに手で書いてください。書いてから答え合わせをすることで、試験本番でも同じ判断がすぐにできるようになります。

Q1確率変数の大文字と小文字の使い分けを説明してください。
大文字 $X$ は確率変数そのもの(振る前は値が定まらない)、小文字 $x$ は実際に現れた具体的な値(実現値)です。$P(X=x)$ は「確率変数 $X$ が値 $x$ をとる確率」と読みます。
Q2離散型と連続型では、確率はそれぞれ何で表されるでしょうか?
離散型は確率質量関数 pmf の「高さ」$p(x)=P(X=x)$ がそのまま確率。連続型は確率密度関数 pdf $f(x)$ の下の「面積」$\int_a^b f(x)\,dx$ が確率です。$f(x)$ の値そのものは確率ではなく、$1$ を超えることもあります。
Q3連続型の確率変数で、一点の確率はいくつでしょうか? その結果、区間の確率の等号の有無はどう扱えますか?
一点の確率は $0$($P(X=a)=0$)。そのため $P(a\le X\le b)$ と $P(a
Q4確率質量関数と確率密度関数に共通する2つの性質は何でしょうか?
(1) 負にならない($p(x_i)\ge 0$、$f(x)\ge 0$)。(2) 全部集めると $1$($\sum p(x_i)=1$、$\int_{-\infty}^{\infty}f(x)\,dx=1$)。離散の $\sum$ が連続では $\int$ に置き換わっているだけです。
Q5公平なサイコロの出目の累積分布関数で、F(4) はいくつでしょうか? また「2より大きく4以下」の確率を F の引き算で求めてください。
$F(4)=P(X\le 4)=\dfrac{4}{6}=\dfrac{2}{3}$。区間の確率は $P(2

次回 2-5a 期待値 では、この確率分布を使って分布の「中心」を表す $E[X]$ を定義し、その線形性を導出します。今日整理した「$\sum$ と $\int$ の対応」が、さっそく期待値の式で効いてきますよ。

さえちゃん
さえ

離散は「高さ」、連続は「面積」。この合言葉さえ忘れなければ大丈夫! 連続型で「一点の確率は0」っていうのも、試験で地味に効いてくるから覚えておいてね。次回はいよいよ期待値。今日の分布が主役になるよ。

HANDWRITING — 紙に書いてインプットしよう!

このページに出てきた重要キーワードです。ページを閉じる前に、声に出しながら紙に手で書いてみてください。手を動かすと、読むだけの何倍も速く記憶に定着します。

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