日本の対外純資産

Net Foreign Assets

日本が海外に持つ財産

ここまで、家計や国内の資産・負債を見てきました。日本という国全体で見ると、海外に対しても資産と負債を持っています。海外の会社の株式や社債を持っていたり、海外に工場を建てていたりする一方で、海外の投資家が日本の株式や国債を持っていることもあります。

海外に対して持っている資産(対外資産)から、海外に対して負っている負債(対外負債)を差し引いたものを、対外純資産(たいがいじゅんしさん)と呼びます。資産と負債で見た「資産−負債=純資産」という考え方を、そのまま国と海外との関係に当てはめたものです。

2025年末の日本の対外純資産は、561兆7,504億円でした。前年に比べて4.4%増えています。

項目
対外純資産(2025年末)561兆7,504億円
前年比+4.4%
世界順位3位(1位ドイツ・2位中国)

出典: 財務省、2025年末

「世界一の債権国」の座を降りた

日本は長年、対外純資産の額で世界最大の債権国(さいけんこく。海外に対して純粋に貸し越している国)の地位を保ってきました。ところが2025年末の時点では、1位はドイツ、2位は中国となり、日本は3位に下がっています。

ここで押さえておきたいのは、日本の対外純資産そのものが減ったわけではないという点です。金額は前年より4.4%増え、過去最高水準にあります。それでも順位が下がったのは、ドイツや中国の対外純資産が、日本よりも速いペースで増えたからです。

たとえば、自分の貯金が毎年着実に増えていても、同級生がそれ以上のペースで貯金を増やせば、順位表では自分が「抜かれた」ように見えます。それと同じで、金額が増えることと、順位が上がることは別の話だという点を混同しないことが大切です。

この財産は何をしてくれるのか

海外に持つ資産は、ただそこにあるだけではありません。海外の株式は配当を生み、海外の工場や現地法人は利益を生みます。こうした海外からの利子や配当は、日本が毎年受け取る収益となり、貿易だけでは説明できない日本の「稼ぎ方」の大きな部分を占めています。

この財産は、いざというときの備えとして語られることもあります。海外に大きな資産を持っているということは、それだけ日本経済全体に厚みがある、という見方です。

ただし、誤解してはいけないのは、この561兆円が国のどこかに現金として積んであり、政府が自由に使えるお金ではないという点です。多くは工場の設備や海外企業の株式といった形をとっており、すぐに現金化できるものばかりではありません。「日本は豊かだから大丈夫」という単純な話にはならない、という点は覚えておきたいところです。

もっと深く ― 誰が持っているのかDEEP DIVE

ここからは、基礎の一歩先の話です。読み飛ばしても本筋は追えます。

「国の財産」というより、民間の財産の集積

対外純資産という言葉を聞くと、政府がまとめて持っている財産のように思えるかもしれません。しかし実際の中身は、いくつもの持ち主に分かれています。政府が万一に備えて持つ外貨準備、自動車メーカーなどが海外に建てた工場や現地法人、そして投資信託などを通じて外国株や外国債券を持つ家計。こうした持ち主それぞれの資産を積み上げたものが、対外純資産の実像です。

つまり、対外純資産の増減は、政府の一存だけで決まるものではなく、企業の海外進出や、私たち一人ひとりの投資行動の積み重ねでもある、ということになります。

考えてみるTHINK
Q1

「対外純資産世界3位」は安心材料でしょうか、それとも順位低下を心配すべきことでしょうか?

ヒント: 「金額が増えることと、順位が上がることは別の話」という部分を、もう一度読み返してみましょう。

Q2

自分の資産の中に「外国」はどれくらい入っているでしょうか?

ヒント: 投資信託や年金の運用先には、外国株や外国債券が組み込まれていることがよくあります。中身を想像してみましょう。

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