日本にはどれくらいのお金があるのか
Money in Japan紙幣は、およそ120兆円しかない ― 意外と少ない「目に見えるお金」
財布の中を覗いてみてください。千円札が何枚か、一万円札が数枚。多くの人にとって、手元にある現金はせいぜい数万円ではないでしょうか。
では、日本中の財布やレジ、金庫にある紙幣を全部かき集めたら、いくらになるでしょうか。日本銀行が発行している紙幣(日本銀行券)の発行残高は、およそ120兆円です(日本銀行「マネタリーベース統計」)。
120兆円と聞くと、途方もない金額に思えます。国の一般会計予算(国が1年間に使うお金の総額)がおよそ115兆円(財務省、2025年度当初予算)であることと比べても、紙幣の総量は国の予算1年分に匹敵する規模です。
けれど、これから見ていくように、この120兆円は、世の中にある「お金」全体からすると、実は一部分に過ぎません。
世の中のお金の総量・マネーストック ― お金の9割は、預金という数字
紙幣が120兆円だとすると、世の中全体にあるお金の総量はいくらなのでしょうか。この「世の中に出回っているお金の総量」を測る指標をマネーストック(個人・企業・地方公共団体などが保有する、お金の量を表す統計)と呼びます。
マネーストックにはいくつかの測り方がありますが、代表的な指標であるM2(現金に加えて、銀行などに預けている預金の多くを含めた、お金の量の指標)で見ると、日本のお金の総量は約1,279兆円です(日本銀行「マネーストック統計」2026年)。
紙幣の120兆円と比べてみましょう。差額の1,159兆円は、紙でも硬貨でもありません。銀行の帳簿に記録された預金という数字です。割合にすると、世の中のお金のおよそ9割が預金で、現金はおよそ1割に過ぎない計算になります。お金とは何かで見た「現金だけがお金ではない」という話が、ここで具体的な数字として裏付けられます。
| 項目 | 金額 | 出典・時点 |
|---|---|---|
| 日本銀行券(紙幣)発行残高 | およそ120兆円 | 日本銀行「マネタリーベース統計」 |
| マネーストック M2 | 約1,279兆円 | 日本銀行「マネーストック統計」2026年 |
現金は、お金全体のごく一部を占める「目に見える部分」に過ぎません。残りの大部分は、銀行のコンピュータの中で数字として存在しているのです。
お金の量をなぜ測るのか ― 多すぎても、少なすぎても困る
日本銀行は、なぜこうしてお金の量を細かく測り、統計として公表しているのでしょうか。理由は、世の中に出回るお金の量が、私たちの暮らしに直接影響するからです。
お金の量が増えすぎると、同じ金額で買えるモノやサービスの量が減っていきます。これが物価上昇(モノやサービスの値段が全体的に上がること)です。スーパーの値札がじわじわ上がっていくあの感覚は、お金の量と無関係ではありません。
逆に、お金の量が少なすぎると、企業がお金を借りて工場を建てたり、人を雇ったりする動きが鈍り、経済全体が回らなくなります。多すぎても少なすぎても困る、ちょうどよい量を見極めるために、日本銀行はお金の量を測り続けているのです。
このお金の量と物価の関係は、次のテーマで詳しく扱います。ここではまず、「お金の量は、測って管理する対象である」という視点を持ち帰ってください。
ここからは、基礎の一歩先の話です。読み飛ばしても本筋は追えます。
預金の合計は、なぜ紙幣の120兆円よりずっと大きくなるのか
「預金は、みんなが銀行に預けた紙幣の合計でしょう?」と思うかもしれません。しかし、預金の合計は、世の中にある紙幣の総量よりずっと大きくなります。これは信用創造(銀行が貸し出しを行うことで、預金という形のお金が新しく生まれる仕組み)と呼ばれるしくみのためです。
数字の例で見てみる(説明のための架空の例です)
Aさんが銀行に100万円を預けたとします。銀行はこの100万円をすべて金庫にしまっておくわけではありません。一部を手元に残し、残りをBさんに貸し出します。仮に80万円をBさんに貸し出したとすると、Bさんの口座には80万円の預金が新しく記録されます。
ここで注目してほしいのは、Aさんの100万円の預金は減っていない、ということです。Aさんの通帳には引き続き100万円と書かれたままで、そこにBさんの80万円の預金が新たに加わりました。合計すると、口座上の預金は180万円になっています。もとの紙幣は100万円しか動いていないのに、預金という形のお金は180万円に増えているのです。
銀行が貸し出しを行うたびに、こうして預金という形のお金が新しく生まれていきます。これが、預金の合計(マネーストック)が紙幣の総量よりもずっと大きくなる理由です。
自分の1か月の支払いのうち、現金は何割くらいでしょうか?
ヒント: 家賃・光熱費・スマホ代・買い物のそれぞれを、どの支払い方法で払っているか思い浮かべてみましょう。
銀行が貸し出しを増やすと、世の中のお金の量はどうなるでしょうか?
ヒント: 「もっと深く」で見た、AさんとBさんの預金の例を思い出してみましょう。