国債残高と政府債務

Outstanding Government Debt

残高は1,100兆円を超えている

「国の借金は1,000兆円を超えている」というニュースを、一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。国債とは何かで見たとおり、国債は国の借用書です。その残高は、いまどれくらいになっているのでしょうか。

財務省によると、国が発行している普通国債(建設国債・特例公債など、通常の予算を賄うために発行される国債の総称)の残高は、2026年度末に約1,145兆円に達する見込みです。

1,145兆円という数字だけでは、大きすぎてピンとこないかもしれません。規模感をつかむために、日本経済が1年間に生み出す付加価値の合計である名目GDP(1年間に国内で新しく生み出されたモノやサービスの価値の合計を、そのときどきの価格で計算したもの)と並べてみましょう。名目GDPはおよそ670兆円(内閣府、2025年度見込み)です。国債残高は、名目GDPのおよそ1.7倍にあたります。

「1年分の稼ぎの1.7倍を超える借金」と聞くと、たしかに大きな数字です。ただし、この比率をどう評価するかは、次の見方が関わってきます。

GDP比で見る理由

借金の重さを測るとき、絶対額だけでなく収入との比率で見ることが大切です。年収300万円の人が100万円を借りているのと、年収3,000万円の人が100万円を借りているのとでは、同じ「借金100万円」でも重さがまったく違います。資産と負債で見た「純資産」の考え方と同じく、借金は必ず何かと比べて初めて意味を持ちます。

国どうしで比較するときによく使われるのが、債務残高の対GDP比です。IMF(国際通貨基金)の推計では、日本の一般政府債務残高は2026年でGDP比204.4%に達し、主要先進国の中で最も高い水準にあります。

ここで一つ注意が必要です。財務省が公表する「普通国債残高(約1,145兆円)」と、IMFが示す「一般政府債務(GDP比204.4%)」は、指しているものの範囲が少し異なります。一般政府(国の一般会計だけでなく、地方公共団体や社会保障基金なども含めた、政府部門全体を指す統計上の分類)には、国債のほかに地方の借金や社会保障の勘定も含まれるため、普通国債残高だけを見るよりも広い範囲の債務を合計した数字になります。どちらも「日本の借金」を語るときによく使われる数字ですが、指している範囲が違うことを覚えておくと、ニュースの数字に振り回されにくくなります。

項目出典・時点
普通国債残高約1,145兆円財務省、2026年度末見込み
名目GDP約670兆円内閣府、2025年度見込み
一般政府債務残高(対GDP比)204.4%IMF、2026年

なぜここまで積み上がったのか

国債残高は、ある年に一気に膨らんだわけではありません。1990年代以降、何十年もかけて積み上がってきた結果です。大きな流れをざっくりとたどってみましょう。

まず、1990年代のバブル経済崩壊後、景気を下支えするための公共事業や減税が繰り返され、その財源の一部を国債でまかなう年が続きました。次に、長期にわたる低成長やデフレのもとで税収が伸び悩んだことも、収支の穴を大きくしました。政府の収入と支出で見たとおり、税収が計画どおり増えなければ、その差は国債で埋めるしかありません。

さらに近年は、高齢化に伴う社会保障費の拡大が、支出を押し上げる大きな要因になっています。年金・医療・介護といった支出は、景気の良し悪しにかかわらず毎年必要になる性質のお金であり、税収の伸びを上回るペースで増え続けてきました。この3つの流れ(景気対策・税収の伸び悩み・社会保障の拡大)が重なった結果として、いまの残高があります。

もっと深く ― グロスとネットDEEP DIVE

ここからは、基礎の一歩先の話です。読み飛ばしても本筋は追えます。

政府にも「資産」がある

ここまで見てきた債務残高は、負債の総額(グロス、資産を差し引く前の総額を指す言葉)です。しかし、家計に資産と負債の両方があるように(資産と負債)、政府にも現金・有価証券・出資金といった資産があります。

そこで、負債の総額から政府の資産を差し引いた純債務(負債の総額から資産を差し引いた、正味の借金の額)で見る考え方があります。IMFの推計では、日本の純債務は2026年でGDP比134.3%という数字も示されています。グロスの204.4%と比べると、かなり小さく見えます。

どちらの見方が「正しい」というわけではありません。グロスで見る立場は「負債は満期が来れば全額を返す、あるいは借り換える必要があり、資産の存在で負債そのものが消えるわけではない」と考えます。一方、ネットで見る立場は「政府が保有する資産も含めた財政全体の体力を見なければ、実態を見誤る」と考えます。この講座では、どちらか一方に肩入れせず、両方の数字を知っておくことを勧めます。この論点は、「日本の借金は大丈夫なのか」を考えるでも改めて取り上げます。

考えてみるTHINK
Q1

借金の「絶対額」と「収入との比率」、どちらで深刻さを測るべきでしょうか?

ヒント: 自分の家計で、借金の金額だけを見る場合と、年収に対する割合を見る場合とで、印象がどう変わるか考えてみましょう。

Q2

家計の借金と政府の借金は、同じ物差しで測ってよいのでしょうか?

ヒント: 返済の期限や、借り換えのしやすさ、寿命の有無など、家計と政府の違いに注目してみましょう。

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