代表値(平均・中央値・最頻値)
1. 算術平均 ─ もっとも基本の代表値
算術平均(単に平均とも)は、すべての値を足してデータ数で割った値です。データを $x_1, x_2, \dots, x_n$ とすると、平均 $\bar{x}$ は次のように書けます。
$\bar{x}$(エックスバー)が平均、$n$ がデータ数、$\sum_{i=1}^{n} x_i$ がすべての値の合計です。
たとえば5人のテスト点数が $70, 80, 90, 60, 50$ のとき、$\bar{x} = \dfrac{70+80+90+60+50}{5} = \dfrac{350}{5} = 70$(点)となります。
度数分布表からの平均
生のデータがなく度数分布表しかないときは、各階級の代表として階級値を使い、「階級値 × 度数」を足し合わせて総数で割ります。階級値を $x_i$、度数を $f_i$ とすると次のとおりです。
階級値を $x_i$、度数を $f_i$ とし、「階級値 × 度数」をすべて足し合わせて総数 $n$ で割ります。
実際にやってみましょう。1-2 で作った40人のテスト点数の度数分布表を、もう一度ここに載せます。今回は計算用に「階級値 × 度数」の列を右端に足してあります。
| 階級(点) | 階級値 $x_i$ | 度数 $f_i$ | 階級値 × 度数 $f_i x_i$ |
|---|---|---|---|
| 30以上 40未満 | 35 | 2 | 70 |
| 40以上 50未満 | 45 | 3 | 135 |
| 50以上 60未満 | 55 | 6 | 330 |
| 60以上 70未満 | 65 | 12 | 780 |
| 70以上 80未満 | 75 | 9 | 675 |
| 80以上 90未満 | 85 | 6 | 510 |
| 90以上 100未満 | 95 | 2 | 190 |
| 合計 | ― | 40 | 2690 |
右端の列を合計すると $\sum f_i x_i = 2690$。これを総数 $n = 40$ で割って、$\bar{x} = \dfrac{2690}{40} = 67.25$(点)が度数分布表からの平均です。生データが手もとになくても、階級値を各階級の代表と見なすことで平均が近似できるわけです。
平均のうれしい性質は、すべてのデータを計算に使うため情報のロスが少なく、数式でも扱いやすいことです。次の章以降で学ぶ分散や期待値も、この平均が土台になります。
2. 中央値 ─ 真ん中に立つ値
中央値(メジアン)は、データを小さい順に並べたときにちょうど真ん中に来る値です。記号では $\tilde{x}$ などと書きます。データ数 $n$ が奇数か偶数かで求め方が少し変わります。
$n$ が奇数なら真ん中の1個がそのまま中央値。$n$ が偶数なら真ん中2個の平均をとります。たとえば $50, 60, 70, 80, 90$($n=5$、奇数)は真ん中の3番目で中央値 $70$。$50, 60, 70, 80$($n=4$、偶数)は真ん中2個 $60, 70$ の平均で $\dfrac{60+70}{2}=65$ です。
中央値は「順番」だけで決まり、足し算も割り算もほとんど使いません。だから前回学んだ順序尺度のデータにも使えますし、何より極端な値の影響をほとんど受けないのが大きな強みです。
3. 最頻値 ─ いちばん多く現れる値
最頻値(モード)は、もっとも多く現れる値、つまり度数が最大の値です。度数分布表なら、いちばん度数の大きい階級(の階級値)が最頻値になります。
$2, 3, 3, 3, 4, 5, 6$ では、$3$ が3回でいちばん多いので最頻値は $3$。さきほど再掲した40人の度数分布表なら、度数が最大(12人)の「60以上 70未満」が最頻の階級で、その階級値 $65$ を最頻値とします。
最頻値は、数値ではない名義尺度のデータにも使える唯一の代表値です。「いちばん人気の色は?」「もっとも売れたサイズは?」のような問いには、平均でも中央値でもなく最頻値が答えになります。
一方、連続データではまったく同じ値が複数出ることが少ないため、階級にまとめてから考えるのがふつうです。3つの代表値の覚え方はカンタンです。
平均は「ぜんぶ足して山分け」、中央値は「並べて真ん中」、最頻値は「いちばん人気者」。アンケートの「好きな色」のように数字ではないデータでは、最頻値しか出番がありません。
4. 外れ値への頑健性 ─ 平均の弱点
3つの代表値の決定的な違いは、極端な値(外れ値)にどれだけ振り回されるかです。お金持ちが1人まざっただけで、平均はビヨーンと引っぱられてしまいます。具体例で見てみましょう。ある部署の7人の月収(万円)が次のようだったとします。
月収データ:$32, 35, 36, 38, 40, 42, 150$(単位:万円)。平均 $\bar{x} = \dfrac{32+35+36+38+40+42+150}{7} = \dfrac{373}{7} \approx 53.3$ 万円、中央値 $\tilde{x} = 38$ 万円(4番目の値)です。
7人のうち6人は30万円台〜40万円台なのに、平均は約53万円。たった1人の高収入(150万円)が平均をぐっと引き上げています。一方、中央値は38万円のまま動じません。
このように、平均はすべての値を計算に使うがゆえに、極端な値があるとそちらへ引っぱられます。逆に中央値は「順番の真ん中」しか見ないので、端の値がどれだけ大きくても(小さくても)びくともしません。
この「外れ値に強い」性質を頑健性(ロバストネス)と呼びます。頑健性が高い順に、おおむね中央値・最頻値 > 平均です。
年収・地価・売上のように一部に飛び離れた値が混じりやすいデータでは、平均だけ示すと実感とズレた印象を与えがち。中央値も併せて報告するのが誠実なやり方です。
5. 歪んだ分布での3者の位置関係
分布が左右対称なら、平均・中央値・最頻値はほぼ同じ位置に重なります。ところが分布が歪むと、3つはズレて並びます。この並び順が2級でよく問われます。
考え方はシンプルです。最頻値は山の頂点、平均は裾に引っぱられる、中央値はその中間に位置します。だから、
- 右に歪んだ分布(裾が右):最頻値 < 中央値 < 平均
- 左に歪んだ分布(裾が左):平均 < 中央値 < 最頻値
- 左右対称:3つはほぼ一致
覚え方は平均は裾の方へ逃げる。裾が伸びている側に平均がいちばん近づき、最頻値はいちばん遠い山のてっぺん、中央値はその間です。これさえ押さえれば、グラフを見ただけで3者の並び順が即答できます。
この章の理解度チェック
答えを開く前に、必ずノートに手で書いてください。書いてから答え合わせをすることで、試験本番でも同じ判断がすぐにできるようになります。
Q15人のテスト点数が $70, 80, 90, 60, 50$ のとき、算術平均を求めてください。
Q2データが $50, 60, 70, 80$($n=4$、偶数)のとき、中央値を求めてください。
Q3「いちばん人気の色は?」という問いに答えられる代表値はどれでしょうか? その理由もあわせて答えてください。
Q4月収データ $32, 35, 36, 38, 40, 42, 150$(万円)で、平均と中央値のどちらが外れ値(150万円)の影響を受けにくいでしょうか? 値も含めて答えてください。
Q5右に歪んだ分布では、最頻値・中央値・平均はどのような順に並ぶでしょうか?
次回 1-4 散らばりの指標 では、「データがどれくらいバラついているか」を測る分散・標準偏差・四分位範囲を学びます。代表値が「中心」を表すなら、散らばりは「広がり」を表す、もう一つの主役です。
「平均は裾の方へ逃げる」──このひと言で、3者の並び順は怖くないよ。グラフの裾を見て、その近くに平均、てっぺんに最頻値、間に中央値。指でなぞって確認してみてね!
このページに出てきた重要キーワードです。ページを閉じる前に、声に出しながら紙に手で書いてみてください。手を動かすと、読むだけの何倍も速く記憶に定着します。
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